欧州左派復権――その言葉が現実味を帯びてきた。ハンガリーでオルバン首相の与党フィデスが主要都市の過半数を野党に奪われ、15年間続いた盤石な体制に初めてひびが入った。イタリアでも、ジョルジャ・メローニ首相率いる右派連合が地方選で明確な後退を記録。この二つの結果が重なった瞬間、欧州の政治地図が静かに塗り替えられようとしている。

オルバン敗北とメローニ後退、二つの「初」が重なった週

ハンガリーの選挙で注目したのは、勝利した野党の顔ぶれだ。マジャール率いる新興野党ティサが、首都ブダペストだけでなく地方の主要都市でも議席を積み重ねた。かつてオルバン政権の支持基盤は「農村部+高齢層」と言われてきたが、今回はその農村票にまで食い込んだという分析が出始めている。15年ぶりに体制の外側から圧力が加わったわけで、これは「一時的な揺り戻し」で片づけるには少し数字が大きすぎる。

イタリアのメローニ後退も同じ文脈で読める。地方選の結果は国政の直接反映ではないものの、移民政策や緊縮財政をめぐる有権者の疲弊感が数字ににじんでいた。右派ポピュリズムの「飽き」が欧州全土で同時進行しているなら、それは偶然じゃなく構造的な流れかもしれない。

「ハンガリーとイタリアの選挙結果は、EU内での左派へのシフトを示している」――EUのリベラ上級副委員長(Bloomberg取材)

リベラ副委員長がBloombergにこう語ったのは、単なる勝利宣言ではなかった。彼女自身がスペイン出身の中道左派で、EUのグリーンディール推進派の中核を担う人物。このタイミングでの発言は、ウクライナ支援や財政統合の加速に向けた「政治的追い風」として意図的に使われている節がある。

ポピュリズム退潮が「EUの制度設計」を動かす理由

ここが見逃せない部分だった。反EU・反移民を掲げるポピュリスト勢力が弱まると、EU内の意思決定が変わる。欧州議会での数の論理が動き、財政統合やウクライナ追加支援の採決で左派・中道連合が主導権を握りやすくなる。オルバン敗北は「ハンガリーの国内問題」に見えて、実はブリュッセルの制度設計を左方向へ引き寄せる力学を持っている。

2010年代、ポピュリズムの波はフランスのルペン、イタリアのサルビーニ、そしてオルバンと連動して欧州に広がった。それが今、個別に亀裂を見せている。ただ、フランスでは極右のRNが依然として強く、ドイツではAfDが躍進中。「欧州左派復権」という言葉を一本の線で語るには、まだ反証も多い。

この先どうなる

次の焦点は2026年内に予定されるフランス地方選と、ドイツ連邦議会での連立協議の行方だろう。ハンガリーのマジャール野党が勢いを維持できるか、それともオルバン政権が巻き返しに出るかも注視が必要。リベラ副委員長が「左派回帰のシグナル」と言い切った根拠は確かに数字の上にある。ただ、ポピュリズムはいつも「有権者の不満」という燃料で動く。経済が悪化すれば、火はまた別の場所でつく。欧州の振り子は止まっていない。