デルシー・ロドリゲスが、かつての仲間に刃を向けている。マドゥロ前大統領が身柄を拘束されてから間もなく、後継者として実権を握ったロドリゲスが、政権を長年支えてきた側近や同盟者を次々と粛清しているとニューヨーク・タイムズが報じた。標的になっているのは、昨日まで同じ船に乗っていた人々だ。
ロドリゲスが消した「マドゥロの守護者」たち
ロドリゲスはもともと、マドゥロ政権の外相・副大統領を歴任し、国際舞台での顔役を担ってきた人物。欧米の経済制裁をかいくぐる外交折衝で辣腕を振るい、政権の「延命装置」として機能してきたとも言われる。
その彼女が今、かつての戦友を排除している。報道によれば、粛清の対象は軍や治安機関に深く食い込んでいた人物も含まれるらしく、単なる政治的スプリング・クリーニングでは済まない規模とみられている。
「拘束されたベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領の後継者は、彼を権力の座に留めてきた人々を粛清している。」(ニューヨーク・タイムズ、2026年4月18日)
ここで引っかかるのは、「マドゥロを守ってきた人々」という表現だ。つまり、ロドリゲスが排除しているのは単なる政敵ではなく、前政権のネットワークそのものということになる。新体制への「忠誠の書き換え」を強制しているわけで、これはかなり乱暴な権力移行といっていい。
産油国ベネズエラで「恐怖の統治」が始まった理由
ベネズエラは南米有数の石油埋蔵量を持ちながら、長年の経済失政と国際制裁で国民生活は疲弊しきっている。インフレ、食料不足、医療崩壊——この20年で国外に流出した国民は700万人を超えるとも言われる。
そんな状況でロドリゲスが向き合うのは、民心の離反と旧勢力の抵抗という二重の脅威だ。正統性が薄い政権が真っ先に頼るのが「恐怖」というのは、歴史を見ると確かにそうなりがちで、今回もその文脈で読める。粛清が権力の安定を生むのではなく、次の粛清を呼ぶ——その連鎖が始まった可能性が高い。
マドゥロ後継としてのロドリゲスの立場は、対外的にもまだ固まっていない。米国をはじめとする西側諸国はこの政権移行を正式承認しておらず、ベネズエラ権力闘争の行方は国際社会の外交カードとも絡み合っている。
この先どうなる
粛清が続けば、軍内部の不満が蓄積されるのは時間の問題だろう。歴史上、独裁体制が内部崩壊する前夜には必ずといっていいほど「粛清の加速」が起きている。ロドリゲスがその連鎖を止められるかは、現時点でかなり怪しい。
一方、米国やコロンビアなど周辺国がこの混乱をどう利用するかも焦点になってくる。石油利権と難民問題を抱えるベネズエラへの関与を強める動きが出てきてもおかしくない。次に粛清される人物が誰かよりも、「誰がロドリゲスを次の標的にするか」——そっちの方が、この話の続きとして注目すべき問いかもしれない。