Anthropicのダリオ・アモデイCEOが、ホワイトハウスの首席補佐官と直接向き合っていた——APがそう報じたのは、静かだが重い一報だった。議題は同社の最新AI技術。大統領に次ぐ権限を持つ首席補佐官が、一民間企業のトップとテーブルを囲んだという事実は、「AIはもう政策の話じゃない、国家の話だ」というシグナルに見える。
首席補佐官が直接動いた、その重さ
ホワイトハウスの首席補佐官といえば、大統領のスケジュールと意思決定を仕切る実務トップ。その人物がAI企業CEOとの会談に時間を割いた、というのがまず引っかかった。
Anthropicは2021年、OpenAIの元幹部たちが「安全なAI開発」を旗印に立ち上げた企業。資金調達ではGoogleやAmazonが大口出資者に名を連ね、評価額はすでに600億ドルを超えるとも報じられている。「安全性重視」を掲げながらも、政府との接点を増やす動きは着実に続けてきた会社だ。
ホワイトハウスの首席補佐官が、Anthropic CEOダリオ・アモデイと同社の新たなAI技術をめぐり会談した。(AP通信)
今回の会談の詳細は明かされていない。だからこそ「極秘」という言葉が独り歩きしているわけだが、少なくともこれだけは言える——ワシントンがAnthropicを、単なるテック企業としてではなく、国家戦略のパートナー候補として見始めているらしい、ということ。
AI規制を「書く側」に回る、という戦略
ダリオ・アモデイはここ数年、議会公聴会への出席や政策文書の公開を積極的に行ってきた。競合のOpenAIやGoogleと横並びに並べられることを嫌い、「安全性」というポジションを意図的に前面に出してきた人物だ。
そのアモデイが政府の最高意思決定ラインと接触しているとすれば、狙いはおそらく一つ——AI規制のルールが書かれる場に、自分たちが座っていること。規制される側ではなく、規制を設計する側に回ること。それがシリコンバレーとワシントンの距離が縮まっている、本当の理由じゃないかと思う。
問題は、こうした対話が民主的な監視の外で進んでいる点だ。議会承認も公開審議もなく、誰がどんな約束を交わしたのかは報道されない。AI規制をめぐる国際競争が激化する今、密室での合意が後から「既成事実」になるリスクは小さくない。
この先どうなる
米国政府がAnthropicとの関係を深めるほど、他のAI企業——OpenAI、Google DeepMind、Metaなど——も同様のチャンネル確保を急ぐだろう。「安全性を語れる企業が政府に食い込む」という構図が一般化すれば、AI規制の議論そのものが、企業ロビー活動の延長線上に乗ってしまいかねない。
ダリオ・アモデイが次にどこに現れるか。議会か、国際会議か、それとも再びホワイトハウスか。その動線を追えば、AIを誰が支配しようとしているのかが見えてくる。答えはまだ出ていないが、レースはもう始まっている。