ホルムズ海峡封鎖と開通が、同じ日に、別々の政府から宣言されるという事態が起きた。世界の原油輸送量の約20%が通過するこの狭い水道で、今まさに綱引きが続いている。

トランプ「開通」、イラン「閉鎖」——24時間で何が起きたか

トランプ大統領は、イランとの交渉が前進しつつあるとして「ホルムズ海峡は再び開かれた」と発言した。ところがその数時間後、イランの首席交渉担当者がまったく逆の言葉を出した。

「米国によるイラン港湾封鎖が解除されない限り、海峡は再び閉鎖される」——イラン首席交渉担当者(The New York Times, 2026年4月18日)

調べていくと、この矛盾はシンプルな構図から来ていた。トランプ政権は交渉の進展を国内向けに「成果」として見せたい。一方でイラン港湾封鎖という圧力カードは手放せない。イラン側はその圧力が続く限り、海峡という自分たちのカードをちらつかせ続ける——そういう話らしい。

開通でも閉鎖でもなく、「どちらとも言えない状態」が続いているわけで、それが市場には一番堪えた。原油価格は乱高下し、大手タンカー会社数社がアフリカ南端の喜望峰回りへのルート変更を検討し始めたという報道も出ている。

20%の原油が迂回すると、コストはどう跳ね上がるか

ホルムズ海峡を通る原油は1日あたり約2000万バレルとされる。ここが実際に閉じた場合、代替ルートとして使えるのはサウジアラビアの東西パイプラインやUAEのパイプラインだが、合計でも最大500万バレル程度しか肩代わりできないという試算がある。

喜望峰迂回になれば航路は約6600キロ延び、輸送コストは最大で通常の3〜4倍になるとも言われていた。イラン港湾封鎖が長引くほど、この「封鎖リスクの保険料」が世界のエネルギー価格に乗ってくる構図だ。

ここが引っかかったのは、トランプ政権が「合意まで封鎖は続ける」と明言している点だ。封鎖を解けば交渉カードを失い、続ければイランは海峡で応じる——詰将棋のような状態で、どちらも最初の一手を指せずにいるように見える。

この先どうなる

焦点は次のイラン核協議の日程だ。交渉が具体的なスケジュールに乗れば、両国とも「カードを使わずに済む」落としどころを探れる。ただし交渉が長引けば、夏の航行シーズンに向けてタンカー保険料や原油スポット価格への圧力は増し続ける可能性が高い。原油輸送リスクがどこまで価格に織り込まれるか、今後数週間の動向が実態を教えてくれそうだ。