ラファ侵攻の準備が加速している。イスラエル軍がガザ南部ラファへの大規模地上作戦に向けて動き出したと、APが報じた。問題はその規模だ——現在ラファには100万人を超えるパレスチナ人が身を寄せており、作戦が実行されれば、2023年10月の戦争開始以来、最悪の人道被害になりうる。そしてホワイトハウスが、異例とも言える形で公然と制止に乗り出した。
バイデンが「公開制止」に踏み切った理由
米国がイスラエルの軍事作戦を表立って牽制するのは、異例中の異例だった。長年にわたる同盟関係の慣習として、両国の摩擦は外交ルートの水面下で処理されてきたからだ。それが今回、ホワイトハウスは公のステージで制止に動いた。
背景を調べると、国内政治の圧力が見えてくる。米国内でも親パレスチナの声が高まっており、特に大統領選を控えたバイデン政権にとって、ラファへの無条件支持は政治的なコストが高すぎる。人道的懸念と選挙計算が重なった結果が、この「公開制止」だったんじゃないか。
「イスラエルは、100万人を超えるパレスチナ人が避難しているガザ南部の都市ラファへの大規模軍事作戦の準備を進めており、ホワイトハウスはこれを阻止しようと動いている。」(AP通信)
もっとも、制止の実効性には疑問符がつく。米国はイスラエルの最大の武器供与国であり、その圧力は本来、最も強いはずだ。にもかかわらず、ネタニヤフ政権はハマス壊滅という目標を掲げたまま動きを止めていない。言葉の制止と兵器の供給が同時並行で続く限り、メッセージの説得力は薄い。
100万人が密集する街に軍が入ったら何が起きるか
ラファはガザ最南端に位置し、エジプトとの国境に接した街だ。戦闘開始以降、ガザ各地から逃れてきた人々が流入し続け、もともとの人口の何倍もの密度になっているらしい。国連機関はすでに、食料・水・医療のすべてが臨界点に達していると警告している。
ここに大規模な地上侵攻が加わった場合——避難できる場所はほぼない。南はエジプト国境、北はすでに破壊が進んだガザ市街地。出口がない状態での軍事作戦は、国際人道法上の重大な問題になりうる。イスラエル・ガザ戦争全体を通じても、これほど逃げ場のない局面はなかったと言っていい。
イスラエル側はラファにハマスの最後の大隊が潜伏していると主張している。軍事的合理性は理解できる。ただ、100万人を「盾」にした形での掃討作戦が国際社会にどう映るか——ネタニヤフ政権がその問いに正面から答えた形跡は、今のところ見当たらない。
この先どうなる
焦点は二つある。一つは、バイデン政権の「制止」が実際に武器供与の条件付きへと発展するかどうか。もう一つは、ハマスとの停戦交渉——カタールやエジプトが仲介する協議——がラファ侵攻前に何らかの合意に達するかどうかだ。
どちらも、時間との勝負になっている。イスラエル軍の準備が整う前に外交が動くか、あるいは作戦が先行するか。バイデン・ネタニヤフ対立が表面化した今、両者の間にある「信頼の残高」がどれだけ残っているかを、世界が注視している。ラファの100万人が、その答えを待っている。