ジェット燃料不足の警告が、よりによって夏の航空シーズン直前に飛び出した。国際エネルギー機関(IEA)のトップがAPの取材に対し、「欧州に残るジェット燃料の備蓄はおそらく6週間分」と明言したのだ。数字だけ見れば6週間は長そうに聞こえるが、世界最大級の夏季航空需要と重なると話は全く変わってくる。

「6週間」が意味するヤバさ——なぜ今なのか

背景を整理すると、今回の備蓄低下には二つの力が同時に働いた。中東情勢の緊迫化による原油供給の圧迫と、欧州各地の精製設備の稼働率低下だ。どちらか一方ならまだ吸収できたかもしれない。両方が重なったから在庫が想定より早く溶けた、ということらしい。
さらに厄介なのは代替調達先の問題。ジェット燃料は原油さえあれば作れるわけではなく、精製プロセスが特殊で、供給できる製油所が世界的に限られている。「じゃあ他から買えばいい」が通じない燃料なのだ。中東依存を6週間で解消するのは、構造的にほぼ不可能に近い。

「欧州には、おそらくジェット燃料が6週間分しか残っていない」——IEAトップ、AP通信に対して

IEA欧州エネルギー危機の文脈で見ると、これは今に始まった話ではない。ロシアのウクライナ侵攻以降、欧州はエネルギー調達の多角化を急いできた。ただ、その議論は主に天然ガスと電力に集中していた。航空燃料は「盲点」だったと言われても仕方ない面がある。

航空会社と旅行者に直撃する3つのシナリオ

では実際に何が起きうるか。一番ありそうなのは、燃料サーチャージの急騰だ。航空各社はすでに燃料コストを運賃に転嫁する仕組みを持っており、供給逼迫となれば夏の欧州便は値上がり必至とみていい。
次に減便リスク。燃料調達コストが採算を超えると、収益性の低い路線から削られていく。格安航空会社(LCC)が多く使う地方空港ほど影響を受けやすい。
三つ目が物流への波及。旅客だけでなく航空貨物も同じ燃料を使う。医薬品や鮮度が重要な食品の輸送コストが上がれば、航空燃料供給の問題はサプライチェーン全体に広がる可能性がある。夏の観光シーズンに欧州を訪れる予定がある人には、今のうちに価格をロックしておくことを勧めたい場面かもしれない。

この先どうなる

IEAが公式の場でこれほど具体的な数字を出したこと自体、かなりの危機感の表れだろう。今後6週間で注目すべきは、中東情勢の動向と欧州各国が緊急放出を決めるかどうか。戦略備蓄の放出は過去にも行われてきたが、それは「時間稼ぎ」に過ぎず、根本的な供給源の確保なしには焼け石に水になりかねない。欧州の空が今夏どうなるか、数週間以内に答えは出そうだ。