ホルムズ海峡再開のニュースが流れた日、原油価格は一日で約9%落ちた。ウォール街はその同じ日に史上最高値を更新している。数字だけ見れば「万事解決」に映るが、調べれば調べるほど引っかかる部分が出てくる。
原油9%下落の正体――消えたのはリスクじゃなくて「プレミアム」だった
今回の価格急落は、供給量が増えたわけじゃない。封鎖によって上乗せされていた地政学プレミアム、つまり「有事の割増料金」が剥がれ落ちた結果らしい。世界の原油輸送量の約2割が通過するホルムズ海峡が数週間ぶりに再開放されたことで、市場はひとまずリスクオフムードを解除した——という読みが正確なところだろう。
米国との停戦合意を経てイランがホルムズ海峡を再開放したことを受け、原油価格は約9%下落し、ウォール街は史上最高値まで上昇した。(AP通信)
ただ、イランの核開発能力もミサイル保有量も、停戦合意の前後でほぼ変わっていない。合意が「能力の解除」ではなく「行動の一時停止」に過ぎないとすれば、今の価格水準は楽観的すぎる、という見方も出てくる。
ウォール街が最高値を祝う一方で、各国が急いでいるもの
株式市場が沸いた背景には、エネルギーコスト低下がインフレ圧力を和らげるという期待感があったとみられる。米イラン停戦合意がもたらした「安堵感」が、リスク資産全体を押し上げた格好だ。
ところが同じタイミングで、欧州・アジアの複数国がエネルギー備蓄の積み増しや代替輸送ルートの検討を加速させているという情報も入ってくる。市場は「終わった」と言っているのに、政府レベルでは「また起きうる」という前提で動いているわけで、そのギャップがちょっと気になるところだった。
原油価格急落でガソリン代が下がれば消費者には恩恵だが、産油国の財政や中東の政治力学には別の圧力がかかる。安くなった原油が新たな火種を生む、という展開は歴史上も珍しくない。
この先どうなる
当面の焦点は、米イラン停戦合意が正式な核合意へと発展するかどうかだろう。そこまで進めば地政学プレミアムは本格的に縮小するかもしれない。逆に交渉が暗礁に乗り上げれば、ホルムズ海峡は再び世界経済の最大の急所として浮上してくる。原油価格の9%下落は「終わり」の合図ではなく、次のフェーズへの入り口——そう見ておいた方が、たぶん裏切られない。各国のエネルギー備蓄戦略の見直し動向も、今後数週間で具体的な形を見せてくるはずだ。