ホルムズ海峡を通る原油は、世界の海上輸送量の約20%にあたる。そこで何かが起きれば、エネルギーコストが跳ね上がり、企業の利益を削り、消費者の財布を直撃する——そのことを、今の株式市場はまだ甘く見ているかもしれない。モルガン・スタンレーのアナリスト、ラジーブ・シバルがブルームバーグTVで発した言葉は、短くて重かった。

モルガン・スタンレーが名指しした「株式市場の死角」

シバルが指摘したのは、単純な話だ。ホルムズ海峡の混乱に端を発したエネルギーショックの影響が、現在の株価にはまだ「未吸収」の部分として残っている、という点。

株式市場というのは、未来を先取りして動くものとされている。でも今回は違うらしい。原油価格の上振れリスクが現実になったとき、それが企業収益にどう跳ね返るか——そのシナリオが、まだ相場に織り込まれていないというのがシバルの見立てだった。

「世界の株式市場は、ホルムズ海峡の混乱に起因するエネルギーショックの影響をいまだ完全には吸収しておらず、この状況が成長センチメントを圧迫する可能性がある」(Bloomberg報道より)

「成長センチメントを下押しする」という言い回しが気になった。これは単に「株が下がるかも」という話ではなく、投資家心理そのものが変わるかもしれないという警戒感だろう。

スタグフレーション再来——エネルギーショックが引き金を引くシナリオ

エネルギーコストが上がると、何が起きるか。輸送費が上がり、製造コストが上がり、最終的に小売価格が上がる。インフレが再燃するわけだ。

一方で、エネルギー価格の高騰は企業投資を萎縮させ、消費者の実質購買力を落とす。景気が冷えていく。インフレと景気後退が同時に進むスタグフレーション——この組み合わせは、金融政策で対処しにくい最悪のパターンとして知られている。利上げすればさらに景気を痛め、利下げすればインフレが加速する。どちらに動いても傷が深くなる構図だ。

2022年のロシアによるウクライナ侵攻後、同様の懸念が世界を覆った記憶は新しい。あのとき市場が受けた教訓を、今の株価は忘れかけているんじゃないかと思えてくる。モルガンスタンレーの警告は、そこへの問いかけとも読める。

この先どうなる

焦点はホルムズ海峡の地政学的緊張がどこまで長引くか、そして原油価格がどの水準で落ち着くかだろう。短期的な混乱で終われば相場の影響は限定的になる可能性もある。ただ、シバルが言った「未吸収」という表現が正しければ、今の株価水準にはまだ下方修正の余地が残っていることになる。

エネルギーショックとスタグフレーションリスクが意識され始めた今、機関投資家がポートフォリオの見直しに動くかどうか——その動きが出れば、相場の雰囲気は一気に変わるかもしれない。静かな警告が、いつ大きな波になるか。しばらく目を離せない局面が続きそうだ。