PacWest銀行の株価が、わずか一夜で50%以上吹き飛んだ。ロサンゼルスを本拠とするこの地銀が「売却を含む戦略的選択肢を検討中」と表明したのが引き金で、市場の売りは翌朝の取引開始直後から止まらなかった。3月のシリコンバレー銀行破綻から数えれば、これで立て続けに地銀が揺らいでいることになる。改めて調べると、今回の動揺が「PacWestだけの問題」ではないことが見えてくる。

欧州でも金融株が連鎖売り——大西洋を渡った動揺の震源地

今回引っかかったのが、欧州市場への波及だ。ニューヨークの地銀1行の悪材料で、なぜロンドンやフランクフルトの金融株まで下がるのか。市場参加者の答えはシンプルで、「次はどこか」という疑心暗鬼が金融株全体に飛び移ったということらしい。米銀危機欧州波及という現象は、今回が初めてじゃなく、3月のSVB破綻後にもクレディ・スイス問題が連動した。「信用の連鎖」は国境を選ばない。

「ロサンゼルス拠点のPacWest銀行が売却を含む戦略的選択肢を検討していると表明したことを受け、同行の株価が50%超急落した。3月のシリコンバレー銀行破綻に端を発した金融不安が広がりつつあるとの懸念が高まっている。」(The Wall Street Journal)

ウォール・ストリート・ジャーナルの整理通り、起点はシリコンバレー銀行破綻連鎖にある。問題の芯は、低金利期に大量に仕込んだ国債が利上げで価値を失い、帳簿の上では「含み損」として積み上がっていること。預金者が不安を感じて引き出しに走れば、その含み損が実損に変わる——その構図が繰り返されている。

FRBの利上げが「時限信管」だったとしたら

FRBが2022年から続けた急速な利上げは、インフレを抑える一方で、銀行が低金利時代に購入した長期債の価値を押し下げた。これは教科書通りの副作用だったが、「どの銀行がどれだけ抱えているか」は外から見えにくかった。SVB、シグネチャー、ファースト・リパブリックに続き、今度はPacWest——という流れを見ると、含み損問題はまだ「出尽くした」とは言いがたい。ある試算では、米国の銀行セクター全体の含み損は最大で5000億ドル規模との見方もある。それが一斉に表面化する事態には至っていないが、市場は毎回、次の「火元」を探し続けている。

この先どうなる

PacWest自身は身売り先を探す段階に入っており、週内にも具体的な交渉相手が浮上する可能性がある。一方でFRBは利上げの打ち止めを示唆し始めており、これ以上の金利上昇が止まれば含み損の拡大には歯止めがかかる計算だ。ただし、預金流出の動きが他の中小規模行に広がれば、規制当局の対応は後手に回りやすい。米銀危機欧州波及の再燃リスクも含め、今後数週間は地銀の週次の預金残高データが市場の「体温計」になりそうだ。とりあえず、次の決算シーズンまで目が離せない。