トリプルタップ攻撃、という言葉がある。爆撃現場に集まった救助者を、第二波・第三波で狙い撃ちにする戦術だ。水曜日、レバノン南部ナバティエ県で起きたのはまさにそれだった。救急隊員3人が死亡し、うち1人はBBCが今週取材したばかりの43歳のファデル・セルハン。彼がテント医療拠点で活動していた理由は、開戦初日の空爆で自分たちの基地が壊されたからだった。

3波連続攻撃の経緯——救助に来るたびに狙われた

レバノン保健省の説明を整理するとこうなる。まずマイファドゥーン地区でイスラエルの攻撃が発生。イスラム系医療協会の救助チームが現場へ急行したところ、再び攻撃を受けた。1人が死亡、1人が行方不明。さらに第二の救助チームが向かうと、今度はそちらも標的にされ3人負傷。その後、リサラ・スカウト協会とナバティエ救急サービスの救急車2台が現場へ向かったが、これも攻撃を受け、2人が死亡、3人が負傷した。計3波、ほぼ連続した攻撃だったとみられている。

イスラエル軍はBBCのコメント要請に対してまだ応じていない。

「レバノン当局者によると、イスラエルによる3度の連続攻撃により、南レバノンで少なくとも3人の救急隊員が死亡した。当局はイスラエルがヒズボラとの戦争において医療従事者を意図的に標的にしていると非難している。」(BBC News報道より)

セルハンが所属していたリサラ・スカウト協会の隊は、開戦直後の空爆でマイファドゥーンの自前の基地を失っていた。その後はナビ・ベリ病院の外に張ったテントを拠点に活動を続けていたらしい。インフラを失いながらも現場に向かい続けた人間が、その現場で命を落とした。

国際人道法 医療従事者への攻撃は何を意味するか

ジュネーブ条約は医療従事者への攻撃を明確に禁じている。1949年の制定から76年、その条文は今なお有効なはずだ。ただ現実には、救助に来るたびに攻撃を受けるという状況が繰り返されている。レバノン保健省は今回の事態を「露骨な犯罪」と断じた。

国際人道法の観点から問題になるのは「意図性」だ。1回の誤爆なら事故と言える余地もある。しかし第一波の現場に集まった救急隊員を第二波で、さらに来た救急車を第三波で攻撃したとなれば、「知りながら攻撃した」という疑惑は避けにくい。過去にガザでも同様のパターンが報告されており、国際社会からの批判は今後さらに高まる可能性がある。

この先どうなる

イスラエル軍がコメントを出すかどうかが当面の焦点になりそうだ。過去のケースでは「ヒズボラの施設と混在していた」「戦闘員が隠れていた」といった説明が出ることもあったが、今回は直前にBBCが取材していた隊員が含まれており、証拠の蓄積という意味で状況が違う。国連やICRCが調査を求める声明を出す展開も十分考えられる。レバノン救急隊員への攻撃が「記録された事件」として積み上がれば、停戦交渉や戦後の責任追及に影響を与えることになるだろう。ただ現場では今日も救急車が走っている。それだけは確かだ。