パキスタンのシャトル外交が、ここにきて一段と速度を上げている。パキスタン外務省はテヘランへの使節団派遣と同時に、米国とイランによる第2ラウンドの協議を「自国開催する見通し」と公式に表明した。日程は未公表。それでもこの一言が持つ重さは、通常の外交声明とはまるで違う。長年ほぼ断絶状態にあった米イラン両国が、第三国を経由してようやく同じテーブルに近づこうとしている——その事実だけで、十分すぎるほどの意味がある。
パキスタンが選ばれた理由——イスラム圏で唯一の「核保有・両天秤」国家
調べれば調べるほど、パキスタン以外に仲介役は考えにくいという結論にたどり着く。イスラム世界に属しながら核保有国であり、米国との安全保障協力も、イランとの宗教的・地政学的紐帯も、両方を手放さずに維持してきた国だからだ。
トルコやカタールも仲介外交では実績があるが、米イラン交渉という案件では政治的重みが足りない。オマーンは過去に秘密交渉の舞台となったことがあるものの、今回は「公式開催」という形式が選ばれた。公式にすることで両国の国内向けに「交渉している」という事実を既成事実化できる——そういう計算も、おそらく働いているんじゃないか。
「パキスタン外務省は、米国とイランの第2回協議の開催を見込んでいると表明した。ただし時期は明らかにしなかった。パキスタン代表団がイランの首都テヘランを訪問する中での発言だ。」(The New York Times, 2026年4月16日)
米イラン交渉 第2ラウンドに向けて、パキスタンが実質的なホスト国として動き出したことは、第1ラウンドが完全には決裂しなかったことを意味する。これは小さいようで、かなり大きな一歩だった。
3つの地雷——国内強硬派・イスラエル・ホルムズ
ただし、楽観視するには材料が足りない。この交渉には少なくとも三つの「地雷」が埋まっている。
一つ目はイラン国内の強硬派。最高指導者ハメネイ師の周辺には、米国との直接交渉を「屈辱」とみなす勢力が根強く存在する。協議の内容が漏れた瞬間に、国内政治が沸騰するリスクがある。
二つ目はイスラエルの動向。テルアビブは米イラン接近を自国の安全保障上の脅威と受け取る傾向がある。交渉が前進すれば前進するほど、イスラエルが単独行動に出る誘惑も高まりかねない。実際、直近のバズニュースでも「テヘラン空爆」が繰り返し話題になっていた。
三つ目はホルムズ海峡。世界の原油輸送量の約2割が通るこの海峡で何らかの軍事的衝突が起きれば、外交の糸は即座に切れる。パキスタンがどれほど誠実に仲介しても、海上の一発が全てをひっくり返しうる。
この先どうなる
テヘランへの使節団派遣が終わり次第、パキスタンは米側とも協議を重ね、第2ラウンドの日程調整に入るとみられる。焦点は「核」だけじゃない。経済制裁の緩和幅、イエメンやレバノンでの代理勢力の扱い——これらが同時並行で俎上に載る可能性がある。
パキスタン自身も外圧にさらされている。国内の経済危機とIMF融資問題を抱える中で、この仲介外交が成功すれば国際社会でのプレゼンス回復につながる。失敗すれば、両国どちらからも信頼を失う諸刃の剣でもある。細い糸の上を、パキスタンはいま慎重に歩いている。