イスラエル・レバノン直接交渉が32年ぶりに実現した——その同じ日、ヒズボラは24回の攻撃を続けていた。外交テーブルと砲声が同時進行するという、なんとも奇妙な一日だった。

ワシントンで5月中旬に開かれたこの協議は、1993年以来初めて両国の代表が同席した場だ。仲介したのはマルコ・ルビオ米国務長官。彼はこの接触を「歴史的機会」と呼んだ。

「レバノンとイスラエルは30年以上ぶりとなる初の外交協議を開催した。仲介役を務めた米国務長官マルコ・ルビオは、ヒズボラの影響力を終わらせる『歴史的機会』だと述べた。」

米国務省の声明によれば、両サイドは「直接交渉の開始」で合意した。ただし日時も場所もまだ決まっていない。「合意したのは、次に話し合うということだけ」という状態に近い。

イスラエルとレバノン、要求の中身がまるで噛み合っていない

イスラエル側が突きつけているのは、非国家武装組織——つまりヒズボラの完全武装解除だ。これはヒズボラに対して軍事作戦を継続する名目でもある。3月2日にイスラエルの軍事作戦が始まって以来、レバノン国内では2000人を超える死者が出ている。

一方のレバノンは即時停戦と人道支援の確保を求めている。武装解除の話を始める前に、まず銃を止めてくれ——そういう立場だ。この2つの要求は、正直なところ同じ交渉テーブルに乗せること自体が難しい。

ルビオ中東外交の狙いとしては、イランの影響下にあるヒズボラを孤立させ、レバノン政府に「国家主権の回復」を促すシナリオが透けて見える。ただ、レバノン政府がヒズボラを「管理」できるかどうかは別の話で、そこには長年の政治的複雑さが絡んでいる。

交渉中も止まらなかった24回の攻撃が示すもの

調べて引っかかったのはこの数字だ——協議が行われていたまさにその時間帯に、ヒズボラは少なくとも24回の攻撃をイスラエルおよびレバノン国内のイスラエル軍に対して実行した。イスラエル北部ではドローンとロケット弾の警報が一日中鳴り続けたらしい。

ヒズボラはレバノン政府の代表団ではない。だから外交テーブルに座っていなかった。つまり「両国が合意しても、実際に銃を撃っている組織は別の話」という構図が、そのまま残っている。ヒズボラ武装解除が実現しない限り、停戦合意に意味が生まれない——というイスラエル側の論理もわからなくはない。

この先どうなる

次回交渉の日程は未定。そこがすべてを物語っているかもしれない。「合意した」という事実は外交的成果として発信できるが、具体的な停戦や武装解除のロードマップはまだ影もない。

ルビオ中東外交がここから何を動かせるかは、米国がどれだけレバノン政府への圧力とインセンティブを同時にかけられるかにかかっている。イランとの関係が変化しつつある今、ヒズボラへの資金・武器供給ルートにも変化が生じる可能性はある。ただ32年分の断絶を数週間で埋めようとするのは、どう見ても楽観的すぎる。続報待ちの案件だ。