バイデン政権による司法武器化の疑惑が、とうとう司法省(DOJ)自身の口から語られた——少なくとも、トランプ前大統領はそう主張している。2025年、トランプ氏はTruth Socialへの投稿で「DOJはバイデン前政権が法律を武器として乱用し、プロライフ活動家の権利を踏みにじったと認めた」と発信。もしこれが事実なら、連邦捜査機関が市民を政治的信条で選別・訴追していたことになる。民主主義の根幹に関わる話じゃないか、と思った人は多いはずだ。

DOJが認定した「標的捜査」——プロライフ活動家に何が起きていたか

事の発端をたどると、2022年の最高裁ドブス判決に行き着く。同判決が中絶の権利を憲法上の保護から外したことで、米国内の政治的分断は一気に沸点へ。バイデン政権はその後、中絶クリニック周辺でのデモや妨害行為を取り締まる「FACE法(診療所アクセス自由化法)」を積極的に適用。問題視されているのは、その適用の仕方だ。

トランプ氏の投稿によれば、DOJは同法をプロライフ側にのみ不均衡に運用し、妊娠中絶推進側の活動家には甘かった疑いがある。DOJ プロライフ活動家への訴追件数が偏っていたとすれば、「捜査対象の選定に政治的意図があった」という批判は避けられない。

「バイデン政権は法律を武器化し、プロライフ活動家の権利を侵害した」——DOJ(トランプ前大統領の投稿より引用)

特に目を引くのは、訴追されたプロライフ活動家の多くが非暴力的なデモ参加者だったとされる点。路上に座り込んで「侵入」と認定されたケースも報告されており、量刑の重さも含めて「過剰訴追ではないか」という声が当時からあがっていた。

「中絶 × 司法の政治化」——これが前例になる怖さ

一方で、冷静に見ておく必要もある。今回の「告発」はDOJの公式発表ではなく、トランプ氏のSNS投稿が出所。DOJが実際にどういう形で何を「認定」したのか、一次資料が公開されていない段階では断定できないらしい。

ただ、それでも引っかかるのは、中絶をめぐる司法の政治化という問題が、特定政権の話に留まらない点だ。バイデン政権がプロライフ側を標的にしたとすれば、次の政権がプロチョイス側を標的にすることだって理論上は可能になる。法執行機関が「どちらを捕まえるか」を政治的に選べる状態になったとき、法の支配そのものが形骸化する。それを一番恐れているのは、実は政治的立場を超えた法曹界だったりする。

この先どうなる

トランプ政権下のDOJが今後どこまで調査を進めるか、が最大の焦点になりそうだ。バイデン時代の訴追案件を再審査し、実際に訴追を取り消すケースが出てくれば、「司法の政治化」批判はいよいよ双方向に炸裂する。プロライフ活動家への補償や謝罪まで踏み込む可能性もゼロではない。逆に、今回の投稿が政治的パフォーマンスに終われば、DOJへの不信感はさらに積み重なるだけ。いずれにせよ、米国の司法が「どちらの側に立っているか」を問われ続ける時代は、しばらく続きそうだ。