米イラン核協議の再開観測が浮上した途端、世界市場はまるで条件反射のように動いた。株価は上昇し、原油価格は下落。投資家たちが「対話」という二文字に値段をつけた瞬間だった。ただ、調べれば調べるほど、この楽観には危ういほど薄い根拠しかない。

市場が動いた理由と、見落としている数字

ホルムズ海峡を通過する原油は世界供給の約20%に相当する。イランをめぐる緊張が高まるたびに原油価格が跳ね上がってきた歴史を思えば、協議期待で価格が下がるのは自然な反応ともいえる。

だが今回の協議期待、具体的な日程も議題の合意もまだ固まっていないらしい。「再開に向かうとの観測が広がった」という段階で市場が動いた。観測が観測を呼んで価格が動く、という連鎖がここにある。

「米・イラン協議の再開期待が高まる中、株価は上昇し、原油価格は下落した。」(The Associated Press)

ここで引っかかったのは、イランが「核主権の放棄」を一貫して拒んでいるという点。米国側は「完全かつ検証可能な廃棄」を交渉の前提から外していない。双方の立場は2015年の核合意崩壊以降、むしろ硬化している。市場が織り込んだ「和平の値段」は、まだ交渉テーブルにも乗っていない話かもしれない。

楽観が崩れたとき、原油はどこまで跳ねるか

過去のパターンを見ると、中東の協議期待が後退した局面での原油価格の戻りは急だった。2022年のウクライナ侵攻直後、原油は一時130ドルを超えた。今のホルムズ海峡周辺の緊張水準は、あのときより静かとは言いにくい。

仮に今回の協議期待が「時間稼ぎ」に終わるとすれば、市場が楽観を解除する速度は、楽観を織り込んだ速度よりずっと速いはずだ。下がった原油価格を手がかりに追加供給の計画を立てた企業や政府があれば、それが次の混乱の呼び水になりかねない。

この先どうなる

米イラン双方とも、国内向けに「強硬姿勢」を見せながら水面下で探りを入れる、という外交の古典的な動きをしているようにも見える。協議が正式に始まれば原油安が続く可能性はあるが、合意には程遠い条件が双方に残っている。
注目すべきは次の交渉会合の有無と、イランの核関連施設の動向。どちらかが動けば、今度は原油価格が「楽観の反動」分も含めて上に跳ねる展開が十分あり得る。市場が先に答えを出した分、現実が追いつく速度には要注意だ。