米イラン核協議の再開——その観測が流れた途端、株式市場は上がり、原油は下がった。「外交が進めば戦争リスクが遠のく」という単純な計算が世界中のトレーダーを動かしたわけだが、ここで少し立ち止まりたくなった。この楽観、本当に根拠があるのか?

原油価格が下落した「もう一つの理由」

表向きの理由はシンプルで、イランへの制裁が緩和されれば原油の供給量が増え、価格は下がるという流れだ。イランは現在、核合意崩壊後の厳しい制裁下でも日量約300万バレルを生産しているとされ、制裁解除で輸出が本格化すれば市場への影響は小さくない。

ただ、調べていて引っかかったのは「タイミング」だった。OPEC+がすでに段階的な増産方針を打ち出している最中に、イランの供給まで加わる可能性が出てきた。原油安はインフレ抑制には追い風だが、産油国の財政には逆風になる。中東地政学リスクの地図が、静かに塗り変わっていく。

「トランプ大統領がイランとの協議再開に前向きな姿勢を示したことを受け、株式市場は上昇し、原油価格は下落した。中東緊張緩和への期待が高まっている。」(Bloomberg、2026年4月13日)

イスラエル・サウジ・ロシアが「沈黙」していない理由

米イラン接近を手放しで歓迎しない国が少なくとも3つある。

まずイスラエル。イランの核開発阻止を安全保障の最優先事項に据えてきた経緯があり、2015年の核合意(JCPOA)のときも猛反発した。今回も同じ構図になりそうだ。次にサウジアラビア。中東の盟主争いという意味でイランとは長年のライバル関係にあり、米国がイランに接近するほど自国の影響力が相対的に下がることを警戒している。そしてロシア。原油安はそのままロシアの外貨収入に直撃する。ウクライナ戦争の資金源を考えれば、黙認するとは考えにくい。

市場が「リスクオフ解除」と読んだ出来事が、別の場所で新たな火種をくすぶらせているというのが、今回のニュースのやや不思議なところだ。

この先どうなる

最初の正式協議がどこで、誰が出席する形で行われるかが最初の見どころになってくる。2015年のJCPOAはウィーンで多国間形式だったが、トランプ政権が好む「二国間直談判」スタイルになれば枠組みも内容も大きく変わりうる。原油価格については、協議が具体的な進展を見せるたびに下押し圧力がかかりやすく、交渉が暗礁に乗り上げれば反発というシナリオが繰り返されそう。イスラエルが軍事的な選択肢を再び示唆してくるようなら、中東地政学リスクは一気に再燃する可能性もある。楽観と警戒が交互に来る、落ち着かない局面がしばらく続きそうだ。