ブラックロック ETF資金流入の勢いが、市場の混乱をそのまま飲み込んだ。2025年第1四半期、ブラックロックは純額1,300億ドル——日本円にして約19兆円——の顧客資金を集めた。イランをめぐる地政学的緊張が高まり、株式・債券市場が激しく揺れていたその最中のことだ。「嵐の中でこそ、でかい船に乗りたくなる」という投資家心理が、数字にそのまま出た格好といえる。

1,300億ドルを引き寄せた「ETFという磁石」

資金流入を牽引したのはETF(上場投資信託)だった。個人投資家も機関投資家も、混乱期には低コストで分散できるETFを選ぶ傾向が強まる。ブラックロックが提供するiSharesシリーズは世界最大のETFブランドであり、「不安になったらとりあえずここ」という選択肢として定着しつつあるらしい。

「ブラックロックは第1四半期に純額1,300億ドルの顧客資金を獲得した。公開・非公開市場の変動やイラン戦争を巡る長引く不確実性にもかかわらず、投資家の資金は流入し続けた。」(Bloomberg)

面白いのは、リスクオフ局面で「現金に戻る」のではなく「ETFに戻る」という行動変容が起きていること。これはブラックロックにとって追い風だが、裏を返せば市場ストレスと運用資産残高が連動して膨らむ、という独特のサイクルが生まれている。BlackRock AUM 11兆ドル超というのは、もはや一企業の話ではなく、金融インフラの話に近い。

「大きすぎて制御できない」——規制当局が動き始める理由

問題として浮上してきたのがシステミックリスク、巨大資産運用会社をどう扱うかという論点だ。銀行なら自己資本規制がある。保険会社なら準備金規制がある。だがブラックロックのような資産運用会社には、同等の「網」がまだ十分にかかっていないという指摘が根強い。

11兆ドルを動かす組織が「売り」に回れば、それだけで市場は動く。逆に「買い支え」に回れば相場を下支えできる。この非対称な影響力が、中央銀行や規制当局にとって頭痛の種になってきた。「大きすぎて潰せない」という銀行問題と似た文脈で、「大きすぎて制御できない資産運用会社」として今後どう位置づけるか——各国当局の間でその議論が静かに熱を帯びているという。

この先どうなる

短期的に見れば、地政学リスクが続く限りブラックロックへの資金集中は止まりにくい。ETFという「安全弁のように見えるもの」への需要が下がる理由が、今のところ見当たらないからだ。ただ、規制面では転換点が近づいているかもしれない。米国・EU双方でシステム上重要な資産運用会社(SIAM)を定義しようとする動きが再浮上する可能性があり、そうなればブラックロックは事業モデルの一部を変えることを迫られる。19兆円を一四半期で集める会社が、次の四半期に規制の標的になる——そんな皮肉な展開も、あながち遠い話じゃない。