ハマス武装解除拒否——その言葉が交渉テーブルに叩きつけられた瞬間、昨年10月から積み上げてきた停戦の土台がぐらりと揺れた。BBCが交渉に精通するパレスチナ当局者の証言として伝えたもので、トランプ政権の和平委員会高官ニコライ・ムラデノフが先月提示した非武装化の枠組みを、ハマスが地域の仲介者を通じて完全拒否したという。
ムラデノフ案とは何か——ハマスが「偏向」と断じた理由
ムラデノフはトランプ政権が設けたガザ和平委員会の最高代表で、昨年末から今年初めにかけて武装解除の具体的なロードマップを練り上げてきた人物だ。先月公表した枠組みでは、ガザに残る武装勢力が保有する兵器の段階的な廃棄と、それに連動した復興支援の開始を結びつける仕組みが盛り込まれていた。
ところがパレスチナ当局者によれば、ハマス側はムラデノフを「イスラエルに偏向している」と名指しで批判。案の内容ではなく、提示者の中立性そのものを問題にした格好だ。仲介者を通じた通告はこうだったらしい——
「ハマスは地域の仲介者に対し、イスラエルが第一段階の条件を完全に履行するまで、第二段階の協議には応じないと伝えた。」
これを受けてイスラエル側は「武装解除の前進なくして次の段階への移行はない」と真っ向から突っぱねており、双方の主張は平行線どころか、むしろ距離を広げつつある状況だ。
停戦の「賞味期限」——第一段階が終わった後に何が残るか
昨年10月に発効した停戦の第一段階は、イスラエル人人質の解放とパレスチナ人捕虜の交換、そしてイスラエル軍のガザ部分撤退という三本柱で成り立っていた。これはひとまず実現した。
問題はその先だ。恒久的な戦争終結、イスラエル軍の完全撤退、そしてガザの本格的な復興支援——これらはすべてムラデノフ和平案が想定する第二段階の成果であり、武装解除の進展と一体で設計されている。ハマスが協議を拒んだまま時間が経過すれば、復興の見通しも消え、ガザの民間人は廃墟の中での停戦という宙ぶらりんな状態に置かれ続ける。
今月カイロを訪問したハマスの代表団はエジプト情報部長官との会談を終えて出発したとされるが、その内容は明らかにされていない。米国のスティーブ・ウィトコフ中東特使が1月に第二段階の開始を宣言してから数か月が経つが、進展らしい進展は出てきていない。
この先どうなる
カイロ経由の水面下調整が続いているとはいえ、ハマスが武装解除という核心問題で姿勢を変える兆しは今のところ見えない。イスラエルが「第一段階を完全履行した」と認めるかどうかという判断基準の食い違いも、そのまま残っている。
ムラデノフ案が「偏向」と烙印を押された以上、米国が別の仲介人を立てるか、枠組み自体を作り直すかという選択に迫られる可能性がある。その間にも復興支援は止まったまま——ガザの現実は交渉の空白のコストを毎日積み上げていく。