ナバティエ空爆で廃墟になった救急ステーション——その壁には、妻と電話中に命を落とした隊員の痕跡がまだ残っていた。BBCの中東特派員ヒューゴ・バチェガが現地の救急隊員に密着し、伝えてきた光景はあまりにも生々しかった。「どこも攻撃された」。隊員がそう言いながら指さした先に、かつて同僚が立っていた場所がある。
救急隊員20人が見た「医療施設攻撃」の現場
イスラエル側は「レバノンの一部の救急車と医療施設はヒズボラに利用されている」と主張している。だが現場の救急隊員たちの言い分はまったく異なる。
「廃墟と化した救急ステーションで、救急隊員は妻と電話中にイスラエルの空爆で命を落とした同僚の場所を指さした。イスラエルはレバノンの一部の救急車と医療施設がヒズボラに利用されていると主張しているが、救急隊員たちはその主張を裏付ける証拠はないと述べている。」(BBC報道より)
レバノン保健省も同様にイスラエルの主張を否定し、「民間人と医療施設を標的にしている」と非難する声明を出した。どちらの言葉が正しいのか、現時点では検証が難しい状況が続いている。
レバノン医療施設攻撃をめぐる対立が激化する一方、南部のビント・ジュバイルでも新たな衝突が確認された。イスラエル国防軍(IDF)は日曜日、「病院敷地内でヒズボラ戦闘員20人以上を殺害した」と発表。ここは2006年のイスラエル・ヒズボラ戦争でも激戦地となった場所で、今また同じ名前が戦況報告に登場している。
100万人が逃げ出した街——ナバティエはその象徴
かつて活気にあふれていたナバティエは今、静寂に包まれている。今年3月に戦闘が再燃して以降、レバノンでは国民の5人に1人が住む場所を失い、避難民の数は100万人を超えたと報じられている。
ヒズボラとビント・ジュバイルをめぐる攻防が続く中、被害を受けているのは戦闘員だけではない。救急隊員も、病院スタッフも、そして電話口で夫の最後の声を聞いた妻も——みんな「市民」だった。そこだけは、どちらの発表も否定できないはずだ。
この先どうなる
停戦交渉の進展が見えない今、レバノン南部への空爆が収まる気配はほとんどない。イスラエルが「ヒズボラのインフラ」と定義する対象が医療施設や橋梁にまで及んでいる以上、民間インフラへの被害は今後さらに広がる可能性がある。国際社会からの圧力が高まっているものの、具体的な停戦合意の枠組みはまだ見えていない。ナバティエの廃墟が「過去の話」になる日が来るとしたら、それはいつなのか——現場の救急隊員たちはまだ、瓦礫の中で働き続けている。