UBP(ユニオン・バンケール・プリヴェ)が金の再買い増しに動いた。年末目標は1トロイオンス6000ドル。現在の価格水準からざっと計算すると、まだ30〜40%の上値余地を見込んでいることになる。驚くのは、この強気予測がイラン戦争による相場急落を経てなお、まったく揺らいでいないという点だった。
イラン戦争の「パニック売り」でUBPが大量に手放した後、何が起きたか
イスラエルによるテヘラン空爆が伝わった直後、コモディティ市場は一時的な混乱に陥った。UBPも例外ではなく、リスク管理の観点からいったん金のポジションを大幅に削減している。ただし、ここが面白いところで、同行はその売りを「撤退」とは捉えていなかったらしい。
「ユニオン・バンケール・プリヴェは、イラン戦争が引き起こした相場急落を受けて大幅なポジション削減を行った後、改めて金の買い増しを開始した。長期的な見通しは依然として健全だと同行は述べている。」(Bloomberg)
つまり、急落局面での売りは「損切り」ではなく「いったん引いて、より低い水準で買い直す」という戦術的な動きだった。地政学リスクが一服した後も金が底堅く推移したことを確認し、再エントリーを判断したとみられる。プロの目には、あの急落が絶好の仕込み機会に映ったってこと。
金価格6000ドル予測の裏にある「ドル不信」という地殻変動
金価格が6000ドルに達するシナリオを聞くと、最初は眉唾に思えるかもしれない。ところが、UBPが挙げる根拠を並べると、そう荒唐無稽でもなくなってくる。
一つ目は、ドル基軸体制への不信感の広がり。米国の財政赤字拡大と、制裁を武器にしたドル兵器化が進む中で、各国が米国債以外の資産に分散しようとする動きが加速している。その受け皿として金が選ばれているわけで、これはイラン戦争の有無とは関係ない構造的なトレンドだった。
二つ目は、各国中央銀行による実物資産の買い増し。中国やインドをはじめ、新興国の中銀が金の外貨準備比率を引き上げているのはここ数年の明確な潮流で、イラン戦争による短期的な乱高下がその流れを変えることはなかったようだ。
三つ目として、金価格6000ドルが現実味を帯びてくると、機関投資家のモメンタム買いが加速するという自己実現的な面もある。UBPほどの名門プライベートバンクが公式に目標価格を掲げた影響は、それなりに大きいだろう。
この先どうなる
イラン情勢が完全に収束するかどうかはまだ見えない。ただ、UBPの再エントリーが示しているのは、地政学リスクが後退しても「金を手放す理由がない」という判断が機関投資家の間で共有されつつあるということだろう。金価格6000ドルという数字が一人歩きして市場心理を動かす局面も、そう遠くないかもしれない。次の注目点は、他の欧米系プライベートバンクが追随するかどうか。似たような声明が続けば、今回のUBPの動きが大きなトレンド転換の起点として語られることになる。