ロシア学生動員が、キャンパスの中にまで入り込んできた。ニューヨーク・タイムズの報道によれば、ロシア全土の数百の大学・専門学校でドローン部隊への勧誘セッションが実施されており、教室が事実上の徴兵窓口として機能しはじめているらしい。これは単なる「軍への就職説明会」では片付けられない話で、戦争が社会の深いところまで浸透してきたことを示す出来事だった。

なぜ今、数百のキャンパスなのか

当局がドローン部隊の勧誘ターゲットとして学生を選んだ理由は、考えてみると腑に落ちる。ゲームやスマートフォンで育った世代は、機器操作への親和性が高い。しかも大学という空間は組織的に管理されており、個人が断りにくい雰囲気が生まれやすい環境でもある。

ウクライナ戦線ではドローンによる消耗戦が激化の一途をたどっており、機体だけでなくオペレーターの補充も深刻な課題になっているとみられる。通常の動員では間に合わない分を、若年層の「自発的」な参加で埋めようとしている構図が透けて見える。

「ロシア全土の数百の大学や専門学校で、勧誘セッションが実施されている。」――ニューヨーク・タイムズ報道より

「勧誘」という言葉が使われているが、大学側がセッションを許可している以上、学生にとってどこまで断りやすい雰囲気なのかは疑問が残る。ドローン部隊勧誘という形を取ることで、徴兵という言葉を使わずに人員を確保するやり方、とも読める。

2022年の動員令から何が変わったか

プーチン政権は2022年9月に部分動員令を発令し、30万人規模の招集を実施した。あの時点では国外脱出ラッシュが起き、ロシア社会に大きな衝撃が走った。今回はそれとはアプローチが違う。大規模な動員令を出すのではなく、日常の空間に少しずつ勧誘を持ち込む方法に切り替わっている印象がある。

ウクライナ戦争長期化が続く中で、正面から「動員」と言えば再び社会的反発を招くリスクがある。だから大学というチャンネルを使って、静かに、継続的に人材を集めようとしているんじゃないかとも考えられる。数字で見れば「数百校」というスケールは、ロシア全土への網の細かさを示していて、決して局所的な話ではない。

この先どうなる

キャンパスでの勧誘セッションが常態化すれば、ロシアの若者にとって「大学に行く=兵士候補になる」という現実が普通のことになっていく可能性がある。ドローン部隊への勧誘という形は今後、さらに裾野を広げるかもしれない。一方で国外に出られない学生層がターゲットになりやすいという指摘もあり、社会的な圧力がどこまで可視化されるかが次の焦点になりそうだ。ウクライナ戦争の行方次第では、この動員手法が他の形にも派生していく展開も十分あり得る。教室の風景が変わり始めたとすれば、それはロシア社会が戦時モードを静かに内面化しつつあることを示しているかもしれない。