ホルムズ海峡封鎖の宣言が出た瞬間、アジア市場は一斉に動いた。国際指標ブレント原油は7.3%高の1バレル102.30ドル、WTIは8.7%高の104.94ドル。ほんの数日前、米・イラン両国が条件付き停戦とホルムズ海峡再開で合意し、原油価格が100ドルを割り込んでいたことを思えば、その落差は際立っている。
停戦合意から崩壊まで72時間足らず——何が起きたのか
2月28日の戦闘開始以来、世界の石油輸送量の5分の1が通過するホルムズ海峡は事実上の停止状態にあった。イランが米・イスラエルの攻撃に対抗し、通航船舶への攻撃を示唆したためだ。インドやマレーシアは個別に「安全通航」を交渉して自国船を通すことに成功したが、大半の国は手が出せないまま。これがエネルギー価格の世界的な高騰を招いてきた。
先週水曜日、両国が2週間の条件付き停戦と海峡再開で合意した際、市場には一時の安堵が走った。原油価格が100ドルを下回ったのはそのためだ。ところが週末の交渉はまとまらず、トランプ大統領はイランの港湾封鎖の実施を宣言。停戦の窓は閉じた。
「原油価格が高止まりする可能性が高い。今後の焦点は、封鎖が完全に実施されるか、海運の混乱が広がるか、そして外交が再開するかにかかっている」——南洋理工大学(シンガポール)エコノミスト、蔡耀輝氏(BBC報道より)
この分析が刺さるのは、三つの「if」がすべて未確定だからだろう。封鎖が絵に描いた餅で終わる可能性もゼロではないが、市場はその賭けに乗れていない。
日経0.7%安——市場が「次の一手」を読めない理由
アジア株式市場も連動した。日経平均は0.7%安、韓国コスピも下落。エネルギー輸入依存度の高い日本・韓国にとって、原油価格高騰は製造コストから電気代まで幅広く波及する。原油価格高騰が企業業績の見通しを直撃するのは過去の事例が示す通りで、投資家がリスクオフに傾くのは自然な反応といえる。
ただ、今回の下落が「パニック売り」でなく「様子見」に近い点が引っかかった。ホルムズ海峡封鎖が本当に完全実施されれば、原油価格はさらに上値を試す局面になりうる。それでも株式市場の下げ幅が1%未満にとどまっているのは、封鎖が外交カードとして使われている可能性を市場が半分は織り込んでいるからじゃないかとも読める。
この先どうなる
焦点は三つ。①封鎖が実際に海上で執行されるか、②停滞する外交が近く再開するか、③中国・インド・欧州がエネルギー確保のためにどう動くか。特に中国は世界最大の原油輸入国であり、ホルムズ海峡の混乱が長引けば独自の外交ルートを動かしてくる可能性がある。米・イラン交渉決裂を受けて原油価格高騰が続く現状では、エネルギー市場は当面、政治の動向に振り回されるフェーズに入った。100ドルが「新たな床」になるのか、それとも再び交渉が動いて急反落するのか——次の72時間が分かれ目になりそうだ。