ラファージュ テロ支援 有罪——この4文字が、2025年のビジネス法務を塗り替えるかもしれない。パリの裁判所が下したのは、世界最大級のセメントメーカーに対する歴史的な有罪認定。シリア内戦が激化する中、ラファージュはイスラム国(IS)などの武装勢力に資金を渡し、自社工場の操業を維持し続けていたとされる。「紛争地でも工場を回す」——その判断が、ついて回っていた。

ISへ渡った「操業継続費用」——ラファージュが認められた行為の中身

調べてわかったのは、これが単純な資金横領や汚職事件ではなかったということ。ラファージュ側の論理は「現地の安全確保のためやむを得なかった」というものだったらしい。だが裁判所はその言い訳を退けた。

ホルシム シリア内戦下の工場は、武装勢力が支配する地域に位置していた。通行料・保護費という名目で資金が流れ、その受け取り先にISが含まれていたとされる。金額は数百万ユーロ規模とも報じられており、「小口の謝礼」では到底片付けられない水準だったようだ。

「ラファージュは、シリア内戦中にセメント工場を稼働させ続けるためテロ組織に資金を支払ったとして、パリの裁判所により有罪判決を受けた。」(Bloomberg、2026年4月13日)

ここが引っかかったのは、当時の経営判断を誰が承認していたか、という点。現場の判断だったのか、本社レベルで把握していたのか。裁判の焦点もそこにあり、組織的関与が認定されたことで判決の重みは一段と増した。

紛争地ビジネス 企業倫理の「グレーゾーン」が消えていく

紛争地ビジネス 企業倫理をめぐる議論は、これまでも何度か浮上してきた。だが今回は違う。多国籍企業が「テロ支援の共犯」として有罪認定されたという前例が、法的に確立してしまった。

これが波及するのは競合他社だけじゃない。石油、建設、物流——紛争地帯で何らかの形で現地勢力と関わりながら事業を続けている企業は山ほどある。そのすべてが今後、「ラファージュの前例」と照らし合わされるリスクを抱えることになった。

各国の規制当局がこの判決を参照すれば、紛争地での事業継続に必要なデューデリジェンスの水準は跳ね上がる。コンプライアンス部門の仕事が増えるどころか、事業撤退の判断を迫られるケースも出てくるだろう。ある意味では、撤退しなかった企業への「遡及リスク」が生まれたともいえる。

この先どうなる

ホルシムはこの判決を不服として上訴する可能性が高い。法廷闘争はまだ続くとみられており、最終的な結論までには数年かかるかもしれない。ただ、上訴で逆転したとしても、「ラファージュがテロ組織と取引した」という事実認定が一度でも下されたインパクトは消えない。

むしろ注目すべきは、各国当局がこの判決を「手本」として使い始めるかどうかという点。米国の外国資産管理局(OFAC)やEUの制裁当局が類似ケースを掘り起こせば、次の被告は別の大企業になるかもしれない。紛争地に工場を持つ企業のリスク計算は、この判決を境に変わったと言っていいんじゃないか——と、少なくともコンプライアンス担当者たちは今ごろ青ざめているはずだ。