ペーテル・マジャルが、16年間続いた体制をたった一夜で終わらせた。開票率98%超の時点でティサ党が138議席を確保、対するオルバン首相のフィデスは55議席にとどまる見通しで、敗北宣言の電話はオルバン本人からかかってきたという。
投票率79.5%という数字が示すもの
今回の選挙で最も引っかかったのが、この投票率だ。79.5%は民主化後のハンガリー史上最高。つまりこれは「野党への熱狂」だけじゃなく、長年投票を諦めていた層が一斉に動いた、ということでもある。
マジャル自身はこの夜、ブダペストのドナウ川沿いの広場に集まった支持者たちにこう宣言した。
「民主主義ハンガリーの歴史において、これほど多くの人が投票したことはなく、いかなる政党もこれほど強い信任を受けたことはない」
45歳の元フィデス内部関係者が、かつて自分が属していた体制を外側から倒す——この構図自体、ドラマとしてできすぎている。マジャルは2年かけてハンガリー全土の村や広場を回り続け、腐敗と縁故主義への不満を票に変えた。
138議席で「オルバン時代の制度」を解体できるか
注目は議席数の意味だ。ハンガリーの憲法改正には全199議席の3分の2、つまり133議席以上が必要になる。138議席はその水準を上回っており、オルバン政権下で整備された司法統制やメディア規制の制度的な巻き戻しが、少なくとも数の上では可能になった。
ただし、オルバン16年の間に張り巡らされた法制度の網は相当に深く、外から壊すのと内側から作り直すのとでは難易度がまるで違う。ハンガリー総選挙2025の結果が「体制転換」として完結するかどうかは、マジャルが今後どの法律をどの順番で手がけるか次第だろう。
極右政党「我々の祖国」は6議席にとどまり、反オルバン票が分散せず一点集中した形になったのも、今回の地滑りを決定づけた要因のひとつだったらしい。
この先どうなる
オルバン敗北後の政権移行がスムーズに進むかは、まだ見えていない。フィデスが長年かけて構築した官僚機構・司法人事・国営メディアのネットワークは、選挙結果だけでは即座に消えない。マジャルが「憲法多数」を持っていても、実際の制度解体には時間と政治的体力が要る。EUとの関係修復を優先するのか、国内の司法改革を先に動かすのか——新政権の優先順位の置き方が、ハンガリーだけでなく東欧の政治地図を塗り替えるかもしれない。とりあえず今夜は、ドナウ川沿いの歓声が正しかったということだけは確かだ。