シェバズ・シャリフ首相の名前が、米イラン交渉の水面下で浮上している。しかも一度ではなく、「努力は継続中」という言葉つきで。なぜ今、パキスタンなのか――そこを追ったら、思った以上に深い話だった。

イランと米国、両方に顔が利く国はパキスタンしかない

パキスタンはイランと1,000キロを超える国境を共有している。民族的・宗教的な結びつきも古く、経済的な相互依存もある。一方で、米国との軍事協力関係も長年にわたって維持してきた国でもある。

この「どちらにも足がある」という立場は、外交の世界では希少価値が高い。特に米イラン間に正式な外交チャンネルがほぼ存在しない現状では、非公式の仲介ルートを持てる国は限られる。カタールも以前から同様の役割を担ってきたが、パキスタンが加わることで選択肢が増えた格好だ。

「パキスタンのシェバズ・シャリフ首相は、米国とイランの間に残る問題を解決するための努力が継続中であると述べた」(Bloomberg、2025年4月)

「継続中」という表現は外交的に意味深長で、すでに一定の接触があったことを示唆している。水面下でどこまで話が進んでいるかは不明だが、少なくとも完全に止まってはいないらしい。

トランプ政権が「交渉と圧力の同時進行」を選んだ理由

トランプ政権の対イラン戦略は、表向きの制裁強化と裏での交渉チャンネル維持を並走させる二重構造をとっている。これは矛盾しているようで、実は計算されたアプローチでもある。

イラン側の状況も変わった。イスラエルとの軍事衝突で防空網の一部が損傷し、核施設への直接攻撃リスクが以前より現実味を帯びている。そのプレッシャーが交渉テーブルに戻る動機になっているとも見られている。

だからこそ、パキスタンのような「中立的な顔」を持つ国が動ける余地が生まれてきた。シャリフ首相がこのタイミングで仲介役に名乗りを上げた(あるいは名乗りを上げたと報じられた)のは、偶然ではないだろう。

核保有国でもあるパキスタンが核問題を抱えるイランの交渉に関わるという構図も、単純ではない。イランの核開発に対して表向き懸念を示しながらも、地域の安定を優先したい――そんなパキスタン独自の計算も透けて見える。

この先どうなる

米イラン交渉が本格化するかどうかは、今後数週間のイランの出方次第という見方が多い。核施設への攻撃リスクが高まれば交渉機運も上がるが、逆に強硬派が主導権を握れば話は流れる。

パキスタンの仲介外交がどこまで実を結ぶかは未知数だ。ただ、シャリフ首相がこのタイミングでBloombergを通じてメッセージを発信したこと自体、国際社会への「自国の存在感の表明」という側面もありそうだった。外交の舞台裏では、何かが動き始めている。