ホルムズ海峡封鎖——その言葉をイランではなくトランプ自身が口にした。世界の原油輸送量の約20%が通過するこの25キロ幅の水道を「逆封鎖する」と示唆したのだから、市場が一瞬凍りついたのも無理はない。TruthSocialへの投稿でトランプは、イランが長年の「切り札」として繰り返してきた海峡封鎖の脅しを、そのままイランへ突き返す形で虚勢を暴こうとした。

イランが20年使い続けた「封鎖カード」、1投稿でひっくり返る

イランは1980年代のタンカー戦争以降、ホルムズ海峡の封鎖を外交圧力の最終兵器として使ってきた。米国が制裁を強化するたびに「海峡を閉じる」と警告し、原油市場を揺さぶる——その繰り返しだった。ところが今回、トランプは「それならこちらが封鎖する」という論理を持ち出した。イランの石油輸出を海上から物理的に遮断するという構想で、実現すれば収入源を一気に断てるという計算らしい。

もちろん現実的な実施ハードルは高い。ホルムズ海峡はオマーン領海と国際水域をまたぎ、米海軍が封鎖を宣言すれば中国・インド・日本・韓国の輸入ルートを同時に塞ぐことになる。同盟国への説明コストだけでも膨大で、「本気の構想」というより「交渉カード」とみるアナリストが多い。ただしカードとして機能する以上、イランの核合意交渉チームへのプレッシャーは本物だ。

「トランプ、ホルムズ海峡封鎖という切り札でイランの虚勢を見事に打ち砕く」——New York Post / Donald J. Trump TruthSocial

日本が「最初の犠牲者」になりうる理由

日本の原油輸入の約9割が中東産で、そのほぼすべてがホルムズ海峡を通過する。トランプ対イラン戦略が緊張を高めるだけで、タンカーの保険料率は跳ね上がり、輸送コストが川下の電気代・ガス代・食品価格に波及する——東日本大震災後のエネルギー危機で経験済みのシナリオだ。原油輸送リスクが「想定内」から「現実のコスト」に変わる瞬間は、意外に早く来るかもしれない。

韓国・インドも事情は似ていて、アジア全体が地政学的なエネルギー人質に近い状態に置かれている。欧州がパイプラインで多角化を進めたのと対照的に、アジア主要国はいまだにタンカー航路への依存を抜け出せていない。ここが引っかかるところで、今回の「逆封鎖」発言はそのアキレス腱を改めて可視化した形になった。

この先どうなる

当面の焦点はイランの反応速度だろう。強硬派が「封鎖辞さず」と反発すれば原油価格は瞬間的に上振れし、穏健派が交渉テーブルを選べば核合意の枠組み再構築に向けた動きが加速する。トランプとしては後者を狙っているはずで、「逆封鎖」発言はその揺さぶりの一手とみていい。ただし地政学的なチキンレースは、どちらかが「本気」と受け取った瞬間に別の局面に入る。次のシグナルはイランの最高指導者ハメネイ師の発言か、ホルムズ海峡周辺での海軍動向——どちらが先に動くか、しばらく目が離せない。