イラン経済崩壊は、爆弾が落ちる前からすでに始まっていた。そこに米国とイスラエルによる大規模爆撃が重なり、ダメージの深さは想像をはるかに超える水準に達しつつある。ニューヨーク・タイムズが報じたその実態を追うと、一つの不都合な数字が浮かぶ——制裁下でリアルはすでに価値の9割以上を失い、外貨準備は枯渇寸前だったということだ。
爆撃が壊したのは施設だけじゃない、通貨も信用も吹き飛んだ
エネルギー施設、輸送網、電力インフラ——爆撃で機能停止した設備の復旧コストは、制裁前のイランでも財政を圧迫する規模らしい。ましてや今の状況では、復興資金を国内で賄う手段がほぼ存在しない。国際市場へのアクセスは制裁で遮断されたまま。ドル建て取引も封じられている。
外国からの投資が入るには、まず制裁が解除されなければならない。だが制裁解除の条件として米国が突きつけるのは、核プログラムの大幅な縮小、あるいは事実上の放棄に近い譲歩だ。軍事的に敗北し、経済的にも追い詰められたイランが、その要求をどこまで飲めるか——そこが今、外交の焦点になっている。
「米国とイスラエルの爆撃がもたらした破壊の規模は、イランが和平交渉を進める上で、制裁解除をこれまで以上に不可欠なものにするだろう」(The New York Times)
この一文が刺さるのは、制裁解除交渉がもはや「外交カード」ではなく「生存条件」になったという現実を端的に示しているからだ。イランは瀬戸際外交をやっているのではなく、瀬戸際に立たされている、というほうが正確かもしれない。
核交渉の値段が、中東復興コストと直結し始めた
ここで見落とせないのが、中東復興コストという概念が一気に現実化したという点だ。これまでの核交渉は安全保障の文脈が中心だったが、今後は経済再建の費用対効果と切り離せなくなる。制裁が1年続けば復興は何年分遠のくか——その計算がイラン国内でも走っているはずだ。
通貨リアルの下落は輸入物価を直撃し、食料・燃料の価格高騰が市民生活を圧迫している。政府が国民に「耐えろ」と言い続けられる時間は、そう長くないという見方もある。内部から崩れるリスクが、外交交渉のタイムラインを縮めている可能性がある。
この先どうなる
制裁解除交渉が核問題の交渉と並走する形で進むなら、イランの譲歩幅がどこに落ち着くかが最初の分岐点になるだろう。経済的圧力が強ければ強いほど、イランは早期妥結を急ぐ。ただしその妥結が「屈服」と映れば、国内の政治的反発が交渉を壊す可能性もある。廃墟の中で外交を続けるという綱渡り——その着地点が見えてくるのは、まだ先の話になりそうだ。