アイルランド燃料危機が5日目に入った土曜日、ついに警察が動いた。コーク州ホワイトゲート精油所の正面ゲートに居座り続けていたトラクター隊に対し、アイルランド警察(ガルダイ)が国防軍の支援を受けて催涙スプレーを使用。強制排除に踏み切ったのは、全国の燃料供給が本格的に限界へ近づいていたからだ。

ガソリンスタンド3分の2が燃料切れ寸前、何が起きていたのか

業界団体「フューエルズ・フォー・アイルランド」の警告は具体的だった。「全国のガソリンスタンドの3分の2が燃料切れ寸前」。数字を並べられると、これがいかに深刻だったかがよくわかる。

ホワイトゲート精油所はアイルランド国内に残る数少ない燃料供給の要衝。ここへのアクセスが5日間断たれたことで、タンクローリーは動けず、スタンドの地下タンクは底をついていった。リムリック州やゴールウェイ州の燃料デポでは、排除後も封鎖が続いているという。

「ガルダイはタンクローリーがホワイトゲートから出発するのをエスコートする映像を土曜午後に公開した。精油所へのアクセスは回復した」(BBC News報道より)

排除後に公開された映像には、警察に先導されて精油所を出るタンクローリーが映っていた。5日ぶりの光景だったらしい。

中東の火種がコークの農道まで燃え移った経緯

そもそも抗議の引き金になったのは、米・イスラエルとイランの軍事衝突に端を発した原油価格の急騰だ。ホルムズ海峡をめぐる緊張が高まるたびに、原油の先物価格は跳ね上がる。それがガソリン価格へと転嫁され、農業用燃料の負担が重くなった農家たちがトラクターで幹線道路を走り始めた、という流れだった。

ホワイトゲート精油所封鎖という形で可視化されたこの怒りは、アイルランドだけの話じゃない。エネルギー自給率が低い欧州各国は、中東の地政学リスクに対して構造的に脆い。フランスでもドイツでも、似たようなコストが市民の家計にのしかかっている。今回のアイルランドで起きたことは、火事の予行演習みたいなものかもしれない。

この先どうなる

ホワイトゲートへのアクセスは回復したが、リムリックとゴールウェイの封鎖は続いており、全面解決には至っていない。ガルダイはトラック運転手への脅迫・嫌がらせについて「刑事行為として全件捜査する」と表明しており、今後は法的対応も動き始めそうだ。

一方、中東原油価格高騰の根本要因は残ったままで、農家側の不満が解消される見通しは現時点でない。政府が燃料税の一時減免などの具体策を示せるかどうかが、次の焦点になってくる。ホルムズ海峡の緊張が続くかぎり、コークの道路がまた塞がれる日が来てもおかしくない。