オルバン選挙の投票日まで、もう数日もない。それなのにニューヨーク・タイムズが報じたのは「忠実な味方が崩れ始めている」という、政権にとって最悪のタイミングでの情報だった。15年間、与党フィデスの屋台骨を支えてきた組織の内部から、批判の声が次々と上がっているらしい。
15年ぶりに見えた「フィデス離反」という亀裂
オルバン・ヴィクトル首相といえば、ハンガリーで独自の「非自由主義的民主主義」を掲げ、EU内で孤立しながらも政権を維持し続けてきた政治家だ。選挙のたびに「野党は弱い」「メディアは抑圧されている」と外部から批判されつつ、それでも勝ち続けてきた。
ところが今回のハンガリー総選挙2026では、外側からの圧力ではなく、内側からのほころびが目立つ。ニューヨーク・タイムズによれば、かつてフィデスが支持基盤として頼ってきた組織の内部から、批判が高まっているという。
「日曜日の投票を前にビクトル・オルバン首相の脆弱性が顕在化するなか、かつて与党が支持基盤として頼りにしていた組織の内部から批判が高まっている。」(The New York Times、2026年4月11日)
調べてみると、こうした内部離反は権威主義的な長期政権が崩壊する直前に繰り返し見られるパターンに近い。外部の批判には耳をふさげても、身内の離脱は塞ぎようがない。これがじわじわと票に響く。
ハンガリーだけで終わらない——EUとNATOへの波紋
仮にオルバン体制が選挙で大きく議席を減らしたとき、影響はブダペストにとどまらない。
オルバン政権はEUの対ロシア制裁に繰り返しブレーキをかけてきた。NATOの内部でも、ウクライナ支援に消極的な立場を取り続けた。その「抵抗役」が政権の主導権を失えば、EU内の合意形成が一気に動きやすくなる可能性がある。一方で、後継政権がどの方向に舵を切るかによっては、別の不安定要因になることも否定できない。
フィデス離反が加速しているとすれば、野党・ペテル・マジャル率いる「ティサ」への票の流れがさらに強まるかもしれない。ただし、選挙制度そのものがフィデスに有利に設計されているという指摘も根強く残る。「議席数」と「得票率」が乖離する展開も十分あり得るわけで、開票結果が出るまで予断を許さない。
この先どうなる
日曜の開票結果が最初の分岐点になる。オルバン政権が過半数を維持すれば、たとえ議席を減らしても「勝利」と宣言され、当面は現状維持が続く。一方、フィデスが単独過半数を失う事態になれば、ハンガリー政治は数十年単位で見ても珍しい局面に入る。
EU側は静観を装いながらも、結果を固唾をのんで見守っているはずだ。対ロシア制裁の次回延長審議も、NATOの追加支援協議も、ブダペストから届く数字によって空気が変わるかもしれない。鉄のカーテンが消えて30年。その後に育った民主主義が今、どこまで根を張っているか——答えが出るのはもう間もなくだ。