アルテミスIIが地球に帰ってきた——9日間、人類がこれまで到達したどの場所より遠い宇宙を旅して。NASAのオリオン宇宙船インテグリティは太平洋への着水に成功し、コマンダー、リード・ワイズマンら4名の宇宙飛行士は待機船に収容された。「完璧な着水」とNASA実況のナビアスが叫んだその瞬間、ヒューストンの管制室は50年分の宇宙開発が凝縮されたような歓声に包まれたらしい。

6分間の沈黙——時速3万8600キロで大気圏に突入した瞬間

大気圏突入時の速度は時速3万8600キロ。ヒートシールドが晒された温度は、太陽表面の約半分に相当する熱だったという。その間、インテグリティとヒューストンの通信は6分間、完全に途絶えた。

6分間。管制室の誰もが画面を凝視するしかない、あの沈黙がどれほど重かったか——それが少し想像できる気がして、調べていて思わず手が止まった。そしてワイズマンの声が届いた。

「乗組員たちは現在、待機していた船に安全に収容され、人類史上最も地球から遠く離れた9日間の旅から回復中です。」(BBC Newsより)

パラシュートが開き、赤と白の傘が空に映えながら宇宙船がゆっくり降下する映像は、月周回有人飛行という前人未踏の記録に、絵になる幕切れを与えた。着水地点は目標からわずか1マイル以内——「完璧なブルズアイ」という言葉が出るほどの精度だったようだ。

アルテミスIIIが動き出す——月面着陸まで、あと何ステップか

今回の月周回有人飛行は、それ自体が目的地ではなかった。NASAのアルテミス計画が描く絵はこうだ:アルテミスIが無人での月周回飛行でオリオンの性能を確認し、アルテミスIIが有人での月周回飛行で宇宙飛行士の耐性と船のシステムを検証する。そしてアルテミスIIIで、ついに人間が月面に降り立つ。

インテグリティの帰還でアルテミスIIは「フローレス・リターン(完璧な帰還)」と評価された。これによりアルテミスIIIのゴーサインが実質的に整ったことになる。さらにその先——月への恒久基地建設という長期ビジョンの実現可能性も、今回の成功で大きく前進したとみていいだろう。

この先どうなる

次のフェーズ、アルテミスIIIは月の南極付近への着陸を目標とする。水氷の存在が示唆されているあの場所が、将来の基地候補として浮上しているからだ。スペースXのスターシップが月面着陸機として採用される予定で、有人月面着陸の具体的なタイムラインが今後NASAから示される見通しらしい。アルテミスII帰還のニュースより、実はそちらの発表日程のほうが次の注目点になりそうだ。人類が再び月面に立つ日は、もう「遠い未来」ではなくなってきた。