グローバル債券利回りが一斉に跳ね上がった。米・欧・日、三大経済圏の中央銀行がほぼ同時にタカ派シグナルを発した結果、2008年以来続いてきた「安い金の時代」が音を立てて崩れ始めたらしい。米10年債利回りは市場が注目していた節目水準を突破し、ドイツ・英国でも複数年ぶりの高値を更新。債券価格は売り一色で、その速度は多くのアナリストの想定を超えていた。
米・欧・日が同時にタカ派へ、これはいつぶりの「三重奏」か
ここが引っかかったポイントだった。過去のサイクルでは、どこかの中央銀行が利上げに動けば、別の国が緩和で補完する「非同期」の動きが多かった。今回は違う。米連邦準備制度(Fed)、欧州中央銀行(ECB)、そして長年ゼロ金利に張り付いていた日本銀行までもが、ほぼ同じタイミングでタカ派姿勢を強めた。三方向から同時に引き締めが来れば、資金の逃げ場がそれだけ狭くなる。
「主要経済圏の中央銀行がよりタカ派的なシグナルを発したことを受け、世界の債券利回りが急上昇した。低金利時代の終焉への懸念が高まり、政府・企業・家計いずれにも借り入れコスト上昇という重荷がのしかかる見通しだ。」
— Financial Times
調べてみると、金利上昇リスクの波及ルートは三本立てになっていた。一つ目は住宅市場。米英を中心に住宅ローン金利がすでに数年ぶりの水準に達しており、購買意欲の冷え込みが統計に出始めている。二つ目は企業の設備投資。低金利を前提に組んでいた資金計画が狂い、特に借り入れ依存度の高い中小企業への打撃が大きいとされる。三つ目が新興国。ドル高と自国通貨安が重なれば、通貨防衛のために利上げを余儀なくされ、もともと財政余力の薄い政府が債務スパイラルに足を踏み入れる恐れがある。
「利上げ慣れ世代」がいない、それが今回のリスクを増幅させている
2008年から2022年頃まで、先進国の金融市場は事実上ゼロ金利・量的緩和という「麻酔」の下で動いていた。その間に社会人になった若い世代、住宅を購入した層、スタートアップに融資した投資家——彼らの多くは「金利が高い状態」をリアルタイムで経験していない。ポートフォリオも、ビジネスモデルも、低金利を前提に設計されている可能性が高い。タカ派中央銀行の政策転換が単なる「利上げ」以上のショックをもたらすとすれば、この「金利感覚のズレ」が主因になるかもしれない。
この先どうなる
市場の焦点は、各中央銀行が「どこで止まるか」の見極めに移りつつある。インフレが鈍化すれば利上げ打ち止め観測が台頭し、グローバル債券利回りは反落するシナリオもあり得る。ただ、労働市場が依然として底堅い国では、インフレの粘着性が予想以上に続く可能性も消えていない。新興国の通貨危機が表面化すれば、先進国の金融機関への飛び火という展開も排除できないだろう。「金利が上がっても大丈夫」な設計になっていない資産や企業が、次の数四半期で選別されていく——市場はすでにその作業を静かに進めているように見える。