ホルムズ海峡チョークポイントが封鎖されれば、世界の原油輸送の約20%が止まる——そこまでは多くの人が知っている。だが今、もう一本の「咽喉」が同時に締まりつつある。電池・半導体・ミサイルに欠かせないレアアースを、中国が世界生産量の60%超で押さえているという事実だ。
ホルムズ封鎖「24時間」で何が起きるか
ホルムズ海峡を通過するのは原油だけじゃない。世界の液化天然ガス(LNG)輸送量の約30%もここを抜けていく。湾岸諸国からアジア・欧州向けのタンカーが毎日列をなして通る、幅わずか33キロの水路だ。
イランとの緊張が高まるたびに保険料が跳ね上がり、スポット価格が乱高下する。それだけ市場がこの海峡を「常に壊れうるもの」として値付けしているってこと。実際、2019年のタンカー攻撃事件のとき、原油先物は一夜で15%近く急騰した。
ただ、面白いのはここからで——エネルギー価格が跳ねたとしても、今の世界は「素材不足」が重なると選択肢が消える構造になっている。
中国レアアース覇権、60%という数字の重さ
EV・風力発電・軍用レーダー。これらに共通するのが、中国でなければほぼ調達できない重要鉱物への依存だ。重要鉱物サプライチェーンの集中度は、ホルムズよりある意味で深刻かもしれない。海峡は迂回路があるが、鉱物の代替生産地を一から立ち上げるには10年単位の時間がかかる。
アメリカがインフレ削減法(IRA)でサプライチェーンの国内回帰を急いだのも、EUが「欧州重要原材料法」を制定したのも、この脆弱性への危機感からだった。それでも現時点では、精製・加工の大半を中国に依存した状態が続いている。
「ホルムズ海峡と重要鉱物の生産における『チョークポイント』は、世界経済における最も重大な脆弱性の二つを象徴している。賭け金は極めて大きい。」(Bloomberg)
調べていて引っかかったのは、この二つのリスクが「独立した問題」として語られがちな点だ。エネルギー安保と素材安保は、有事のとき同時に発動する可能性が高い。イランとの緊張は湾岸産油国を揺らし、湾岸を揺らせば脱炭素向け投資が加速し、その投資がレアアース需要をさらに押し上げる——という連鎖がある。
この先どうなる
短期的には、ホルムズ情勢とイラン核交渉の行方が最大の注視点になる。交渉が決裂すれば制裁強化→タンカーへの圧力という流れが現実味を帯びる。
一方、重要鉱物サプライチェーンの多角化は少しずつ進んでいる。カナダ・オーストラリア・アフリカ諸国への投資が増え、米欧は中国依存を段階的に引き下げようとしているが、2030年代に入るまでは「中国なしでは回らない」状態が続きそうだ。
二つのチョークポイントが同時に閉まるシナリオは、今のところ「最悪ケース」として扱われている。ただ、最悪ケースの発生確率が静かに上がっている——それがBloombergが今この問題を取り上げた理由じゃないかと思う。