マスード・マスジューディが「同胞2人に狙われている」と周囲に訴えてから、数日後に遺体で見つかった——バンクーバーで起きたこの一件は、単純な殺人事件として片づけられない背景を持っている。

失踪前夜、彼が仲間に残した言葉

マスジューディはイラン出身の民主活動家で、カナダに渡った後も反体制運動を続けていたとされる。失踪直前、彼は「自国出身の人物2名から命を狙われている」と複数の知人に打ち明けていたという。

「バンクーバーのイラン人活動家は、同国出身の2人の人物から命を狙われていると訴えた後に失踪した。そして、遺体が発見された。」(The New York Times、2026年4月11日)

この証言が事実なら、脅威はテヘランから飛んできた刺客ではなく、すでにカナダ国内に潜伏していた人物によるものだったことになる。そこがゾッとするところで、「難民として逃げてきた顔」と「工作員の顔」が重なりうる、ということでもある。

イランの海外暗殺網——カナダまで届いていたのか

イランが海外の反体制活動家を組織的に標的にしてきたのは、もはや「疑惑」のレベルじゃない。国連の報告書も繰り返しその工作網の存在を認定してきた。欧州ではすでに複数の暗殺計画が摘発されており、アメリカでも要人暗殺未遂が確認されている。カナダは比較的「安全圏」とみなされてきたが、今回の件でその前提が崩れつつある。

イラン ディアスポラ 暗殺という文脈で見ると、今回の事件は孤立したケースではなく、長期的なパターンの一部に見えてくる。テヘランにとって、亡命先で声を上げ続ける活動家は「国家の敵」であり続ける。国境を越えても、その認定は消えないらしい。

カナダ国内のイラン人コミュニティへの影響も深刻だ。「隣人が工作員かもしれない」という疑念が広がれば、コミュニティの連帯は一気に瓦解する。難民として命からがら逃げてきた人々が、逃げた先でも監視と恐怖にさらされる——そういう構図がカナダ イラン工作の問題を単なる外交案件以上のものにしている。

この先どうなる

カナダ当局がこれをイラン政府の関与による工作として立件できるかどうか、それが最初の焦点になりそうだ。ただ、証明のハードルは高い。工作網の特性上、末端の実行役を特定できても、テヘランまでの線をつなぐのは容易じゃない。

外交的には、カナダはすでにイランと国交を断絶しており、直接の抗議ルートは限られている。国際社会の圧力や国連の場での追及が現実的な選択肢になるが、過去の事例を見る限り、それがイランの行動を止めた例はほとんどない。マスジューディの死が政治的な転換点になるか、それとも「また一件」として記録されて終わるか——そこはまだ、見えていない。