トランプ大統領がワシントンDCへの凱旋門建設申請を提出した——その一報が流れたとき、思わず「これは比喩か?」と確認してしまった。Truth Socialへの本人投稿によれば、比喩ではない。パリのシャンゼリゼに立つ高さ50メートルの石造りのあれを、アメリカの首都に建てるという計画が、正式な申請書と計画書の形で動き出したらしい。
パリの凱旋門と何が違う? DCに建てると意味が変わる理由
パリの凱旋門はナポレオンが1806年に着工を命じた戦勝記念碑で、完成まで30年かかった。「帝国の栄光を石に刻む」という発想の産物だった。ワシントンDCに同種の構造物を建てるとなると、問われるのは「誰の凱旋か」という点になる。
DCの連邦記念建造物は通常、議会の承認と複数の審査機関によるプロセスを経て建設される。ナショナル・モールを管轄する国立公園局、首都計画委員会、そして議会の承認——いくつもの関門がある。今回の申請がどの機関に提出されたのか、費用をどこから捻出するのか、いずれも現時点では明らかになっていない。
「本日、私の政権が正式に申請書と計画書を提出したことを喜んでお知らせします」——Donald J. Trump(Truth Social、2025年)
投稿の文面は短く、数字も場所も工期も書かれていなかった。「喜んでお知らせします」という書き出しは大統領の声明というより、不動産プロジェクトの告知に近い雰囲気だった。そこが引っかかった。
Triumphal Arch Washington DC計画に専門家が懸念する3点
都市計画や連邦建築の専門家が早速指摘しているのは主に三つ。一つ目は公共スペースの政治的シンボル化。ワシントンDCのモニュメントはリンカーン記念堂にせよ、ワシントン記念塔にせよ、特定の政権ではなく国家全体を象徴するものとして設計されてきた。凱旋門はその設計思想と相性が悪い。
二つ目は連邦予算の使途。議会の承認なしに大規模公共建造物の建設費を確保できる手続きは存在せず、現時点で財源は不明のまま。三つ目が「大統領個人の凱旋イメージ」との混同だ。Triumphal Arch——字義どおり「凱旋の門」——を現職大統領が在任中に推進すると、誰のための凱旋なのかという疑問は避けられない。
もっとも、申請提出と着工は別の話。過去にも大統領が構想をぶち上げて計画が棚上げになったケースは少なくない。今回も「申請」の段階であり、実際に鉄骨一本が立つまでには長い道のりがある。
この先どうなる
次に注目すべきは議会の反応と、申請先となった機関が計画の詳細を公開するかどうか。もし首都計画委員会や国立公園局が正式な審査に入れば、場所・規模・費用の全容が文書で明らかになる。共和党内にも「連邦予算で凱旋門を建てる必要があるか」と首をかしげる議員がいる可能性は十分あって、議会通過のハードルは低くない。トランプ氏がSNSで既成事実化を図り、反対派が予算審議で潰しにかかる——そういう展開になりそうな予感がする。続報は早ければ数週間以内に出てくるはずだ。