スターマー英首相の防衛費引き上げ方針が、政権の延命策として浮上してきた。ブルームバーグが2026年4月11日に報じたところによれば、英国の軍事費をGDP比3%超に引き上げることをスターマーが決断したという。現行目標はNATOが各国に求める2%。その1.5倍超という数字は、どう読んでも「通常の政策変更」じゃない。
トランプと党内反乱、二正面からの崖っぷち
圧力源は二つある。一つはトランプ政権が突きつけるNATO負担増要求。「欧州は自分で守れ」という米国の姿勢は年々強まっており、英国が2%のままでいることへの風当たりは相当なものになっていたらしい。
もう一つが、足元の労働党内部だった。スターマーの支持率は低迷が続いており、2026年に入ってから党内の動揺が表面化しているとされる。「防衛強化で国民に存在感を見せる」という計算が、今回の決断の背後にあるとみられている。
「キア・スターマー英首相は、ドナルド・トランプと自党・労働党の双方からの圧力の中、政治的立場を固めるため、当初計画を上回る英国の防衛費引き上げを決断した。」(Bloomberg, 2026年4月11日)
つまり、外圧と内圧が同時に重なったタイミングで、軍拡路線という「わかりやすいカード」を切ってきたということ。
英国GDP比3%の軍事費、財源の穴は誰が埋めるか
ただし、NATO負担分担の文脈でこの数字を見ると、話はすんなりしていない。GDPの3%超という水準は、英国の現状から計算すると年間数百億ポンド規模の追加支出になる。財源の候補は限られている——増税か、社会保障の削減か。
労働党は福祉国家の維持を旗印にして政権を取った。軍事費を積み増せば、その財源を医療や年金から削るという矛盾が生まれる。支持率を上げるための防衛強化が、逆に支持層を切り崩す——そういうシナリオも十分あり得る。
さらに今回の動きが欧州全体に与えるドミノ効果も見逃せない。英国がGDP比3%を打ち出せば、フランス・ドイツへの圧力が一気に強まる。NATO加盟国の間で「3%が新しい基準」として定着するようなら、欧州規模の軍拡競争が本格的に加速していく可能性があった。
この先どうなる
スターマー政権がこの方針を正式発表するタイミング、そして財源の手当てをどう説明するかが当面の焦点になりそうだ。増税路線を選べば中間層の反発、社会保障削減を選べば労働党の岩盤支持層が揺れる。どちらを選んでも火種が残る構図で、「防衛強化で支持率回復」という目論見が本当に機能するかは未知数といったところ。欧州側の反応次第では、NATO内部の防衛費をめぐる議論が2026年中に大きな転換点を迎える可能性もある。英国の財政論争と欧州の安保再編が、同時進行で動き出した局面と言えるだろう。