アフリカ開発銀行の水資源投資は過去10年で着実に拡大してきた——なのに、約4億人がいまだ安全な水を手にできていない。数字だけ見ると、何かがおかしい。

Chirwa局長が認めた「お金では買えないもの」

2026年4月11日、Bloombergのインタビューに応じたアフリカ開発銀行(AfDB)水・衛生局長のムチェラ・チルワ氏は、こう言い切った。

「このセクターの格差は、資金を注入するだけでは解決しない」

AfDBはここ10年、上流域のプロジェクト整備から海水淡水化、廃水処理プラントまで投資を広げてきた。規模の話でいえば、確かに前進している。ただ、お金が動いた場所と、水が届かない場所が一致していない——そこに問題の芯があるらしい。チルワ氏が指摘したのは、制度設計とガバナンスの欠如だった。インフラが完成しても、それを維持・運営できる仕組みがなければ朽ちるだけ、ってことだ。

気候変動が「4億人」をさらに増やす

アフリカ水不足 2026という文脈で見ると、話はもう少し重い。気候変動による降水パターンの乱れが、もともと脆弱な水源を直撃している。サヘル地域では乾季と雨季の境界線が崩れ、農業用水と生活用水が同時に不足する地域が増えている。専門家の試算では、適切な対策なしに現状が続けば、2030年代には安全な水にアクセスできない人口がさらに数千万単位で増える可能性がある。

Mtchera Chirwa AfDBの発言が注目されるのは、これが「もっと投資を」という従来の呼びかけではなかったからだ。むしろ逆——「今ある投資が機能していない理由」を問い直す発言だった。資金を受け取る側の行政能力、汚職リスク、地域コミュニティとの連携不足。そういった地味で複雑な課題を、銀行の幹部が公の場で認めたのは珍しい。

この先どうなる

AfDBが次に打つ手として注目されているのは、インフラ投資と並行した「制度強化プログラム」の拡充だ。資金の使われ方を追跡する透明性の仕組みと、地方自治体の運営能力を底上げするトレーニングへの投資が焦点になるとみられている。ただ、そこには時間がかかる。気候変動の進行スピードと、制度改革のスピードのどちらが速いか——2030年代のアフリカの安定を左右するのは、そのレースの結果かもしれない。水の問題が、気候・政治・安全保障をまたぐ話になってきた。静かな危機ほど、気づいたときには遅いことが多い。