台湾輸出が史上最高値を叩き出した。中東では戦火が続き、米イラン戦争がサプライチェーンをかき乱している最中の話だ。それでも世界からシリコン島への注文は止まらなかった――というより、むしろ加速していたらしい。Bloombergが報じた。
戦争中でも「AIチップをくれ」が勝った
通常なら、大規模な地域紛争はサプライチェーンを萎縮させる。企業は発注を控え、物流は滞り、輸出数字は下がる。ところが今回は逆だった。
AIインフラへの投資レースが、そのロジックを完全にひっくり返した格好だ。クラウド企業も、防衛関連企業も、各国政府も、AI用の演算能力を確保したくて仕方ない。その演算能力の中核を握るのが台湾産のチップ、そしてTSMCのファウンドリーだ。
「台湾の輸出は史上最高値へと急騰した。AIチップへの世界的な爆発的需要が、米イラン戦争がもたらしたサプライチェーンの不確実性を完全に塗り替えた」(Bloomberg)
調べてみると、台湾の輸出に占める電子部品・半導体の比率はここ数年で急激に上昇している。つまり「AIチップ需要が伸びる=台湾輸出が伸びる」という方程式が、今やほぼ自動的に成立する状態になっていた。
TSMCなしには回らない、という現実がまた一歩進んだ
ここが個人的に引っかかったところだ。地政学リスクが高まれば高まるほど、「台湾依存を減らそう」という声は世界中で上がる。米国の「CHIPS法」も、欧州の半導体投資も、その文脈で語られてきた。
なのに実態は逆方向に動いている。AIチップ需要の爆発が、脱台湾の動きを速度で追い抜いてしまっているわけだ。台湾 地政学リスクとTSMCへの依存は、同時進行で拡大している。
もう少し踏み込むと、台湾海峡の緊張が高まること自体が、チップの「希少価値」をつり上げるという奇妙な構図も見えてくる。リスクがあるとわかっていても、在庫を積み増すために発注が増える。結果として輸出数字が上がる。戦争リスクが輸出を押し上げる、という逆説的なサイクルだ。
この先どうなる
AIインフラへの投資は2026年以降も加速する見通しで、AIチップ需要が一服するシナリオはしばらく見当たらない。台湾輸出の最高値更新はまだ続く可能性が高いだろう。
一方で、米国・日本・欧州での半導体工場建設も着実に進んではいる。ただ、最先端プロセスでTSMCに追いつくまでには数年単位の時間がかかる見込みで、その間は今の依存構造が続く。台湾海峡で何か起きたとき、世界がどう動くか。その「答え合わせ」の時間は、じわじわと近づいているかもしれない。