新興国株の週間上昇率が、コロナショック以来6年ぶりの規模に達しようとしている。今週末に予定される米・イラン直接協議を前に、投資家が一斉に動いた格好だ。ただ、この買いは「緊張緩和が実現する」という確信ではなく、「そうなってほしい」という期待に乗った先回りに近い。そこが少し引っかかった。
6年ぶりという数字が示すもの
Bloombergの報道によれば、新興市場株は今週、約6年ぶり最大の週間上昇ペースで推移した。6年前といえば2020年のコロナショック後の急回復局面。あの時と同規模のマネーが、今週だけで動いたことになる。
「新興市場株は、今週末の米・イラン協議を前に、約6年ぶり最大の週間上昇に向かっている。不安定な停戦のなか、中東緊張のさらなる緩和を期待した投資家が動いた」(Bloomberg)
中東では不安定な停戦が続いており、完全な和平とはほど遠い状況らしい。それでもこれだけの資金が動いたのは、「協議の席に両国が着く」というだけで、市場が十分なシグナルと受け取ったためだろう。裏を返せば、それだけ長い間、地政学リスクが新興国資産の重しになっていたってことでもある。
ホルムズ海峡リスクと協議決裂シナリオ
米イラン協議2025が順調に進めば、中東の緊張緩和が原油供給の安定につながり、新興国へのリスクマネーの流入が続く展開も見えてくる。だが、協議が決裂した場合はまるで逆だ。
ホルムズ海峡リスクが再浮上すれば、世界の原油輸送の約2割が通過するこの海峡の封鎖懸念が資源価格を押し上げ、サプライチェーン全体に波及する。新興国の輸入コストが跳ね上がり、今週の上昇分が一気に吹き飛ぶシナリオも十分あり得る。今の市場は楽観に振れすぎているとも読めるわけで、そこは注意が必要だろう。
米イラン協議2025という外交イベントが、これほど直接的に世界の株式市場を動かしているという事実。投資家にとって外交の結果は、今や純粋な金融変数になっている。
この先どうなる
今週末の協議結果次第で、市場の景色はがらりと変わる。協議が前進すれば、ホルムズ海峡リスクの後退を材料に新興国株はさらに買われ、資源価格も落ち着く方向で推移しそうだ。一方、決裂や協議の延期となれば、今週の急騰は「期待の先食い」として売りに転じる可能性が高い。週明けの市場は、週末の外交テーブルで何が起きたかを、秒単位で値段に反映させにいくだろう。6年ぶりの最良週が、最もリスクの高い転換点と隣り合わせにあるというのが、今この瞬間の相場の正直な姿だと思う。