中国電池メーカーへの過剰設備規制が、わずか3ヶ月余りで2度目を数えた。これは異例だ。政府が自ら火をつけた拡張路線を、今度は自ら消しにいっている格好で、どこかチグハグさが拭えない。
「太陽光の悪夢」をCATLに繰り返させたくない中国の計算
思い返せば、中国の太陽光パネル産業は2010年代に世界シェアを一気に握った。補助金と国家主導の増産で供給が需要を大幅に上回り、価格は床を抜けた。欧米メーカーは次々と撤退を余儀なくされたが、中国勢も体力を大幅に削られた。利益なき覇権、ということらしい。
今の電池産業はその再現リスクを抱えている。中国勢は世界シェアの約70%を握るとされ、CATLをはじめとする大手が設備投資を積み上げてきた。ところが需要の伸びが投資ペースに追いつかず、稼働率が下がり、値下げ競争が始まっている。EVバッテリー価格の下落は消費者には朗報でも、メーカーの収益を直撃する。
「中国は3ヶ月余りで2度目となる主要電池メーカーの招集を行い、設備増強の抑制と、過去に他の再生可能エネルギー産業を傷つけた価格戦争の回避を改めて求めた」(Bloomberg)
2度目の召集という事実が示すのは、1度目の警告が十分に機能しなかった可能性だ。各メーカーが「政府は言うだけで本気じゃない」と踏んでいるのか、あるいは設備投資を止めたくても止められない構造があるのか。その辺りは外からは見えにくい。
日本・韓国・欧州メーカーが「漁夫の利」を得られるかは別の話
中国の過剰設備問題が表面化したとき、競合各国のメーカーに追い風が吹くと考えたくなる。だが、EV バッテリーの価格競争は既に始まっており、中国製の低価格品が市場に流れ込む圧力は続いている。パナソニック、LGエナジーソリューション、サムスンSDIといった非中国勢が恩恵を受けるためには、価格以外の差別化——性能・安全性・調達安定性——を実際に示せるかどうかにかかっている。
欧州では中国製EVへの追加関税が課されているが、電池セル単体の規制は別の話。日本勢は全固体電池への移行で差をつけようとしているが、量産が軌道に乗るのはまだ先の見通しだ。今のところ「中国が自滅すれば自動的に浮かび上がれる」という楽観は通用しない。
この先どうなる
中国政府が召集を繰り返しても、市場原理と企業の生存本能は簡単には制御できない。補助金で育てた産業の過剰を行政指導で抑えるというのは、アクセルとブレーキを同時に踏む話でもある。今後注目すべきは、政府が「指導」から「規制」へと手を強める局面が来るかどうかだ。生産量キャップや設備投資審査の義務化といった強制措置に踏み込めば、中国電池メーカーの輸出戦略にも影響が出る。そうなれば、EVバッテリーの国際価格は今とは違う動きを見せるかもしれない。静かに、でも確実に、地殻変動は続いている。