鄭麗文と習近平の会談が実現した——KMT現職党首として10年ぶりとなる訪中で、舞台は北京・人民大会堂。台湾の与党・民進党が「北京への屈服」と激しく批判するなか、この会談が単なる儀礼的接触で終わらない可能性が浮上している。

習近平が突きつけた「条件」と、鄭麗文の返答

会談で習近平は、両岸の対話強化に前向きだと明言した。ただし、条件がある。台湾独立への反対、これが前提だという立場を崩さなかった。

「本日、両党首脳が会談するのは、共有する故郷の平和と安定を守り、両岸関係の平和的発展を促進し、将来世代が明るく美しい未来を共有できるようにするためだ。」(習近平、人民大会堂にて)

これに対して鄭麗文は「中華民族の再興は両岸共通の願望」と応じた。BBCによれば、非公開の会談後に開かれた記者会見でも、鄭は「平和のための訪問」と繰り返している。民進党側が「屈服」と呼ぶ言葉を選んだのは、この一連の発言を指してのことらしい。

2016年に凍結されたホットライン、9年越しの再接続か

この訪問を理解するには、2016年という年が鍵になる。民進党の蔡英文が総統に就任した際、北京は「一つの中国」概念への支持を拒否したとして、台湾との高レベル協議を打ち切った。それから9年。KMTは2024年の総統選でも敗れ、再び野党に甘んじている。国民党・KMT訪中 2025という形で対話ルートを温め直そうとする姿勢は、党の生存戦略とも読める。

台湾内部では「対話か対決か」の路線対立が以前にも増して鮮明になっている。与党・民進党が対中強硬姿勢を維持するなか、KMTが北京との接触を再開すれば、台湾海峡・両岸関係をめぐる議論が島内で再燃するのは避けられない。

この先どうなる

最も気になるのは、ワシントンの反応だ。BBCは、米中対立が先鋭化するなかで台湾内部に「対話派」が存在することが、アメリカの台湾政策に新たな亀裂をもたらす可能性を指摘している。トランプ政権下でアメリカ自身の対中外交が揺れているタイミングでもあり、KMTの動きが「抜け穴」として機能するとワシントンが判断すれば、対台湾圧力に転化するシナリオもゼロではない。鄭麗文が「平和のため」と言えば言うほど、民進党は「北京の代弁者」というレッテルを貼り続けるだろう。台湾内政の分断は、今後さらに深まりそうな気配がある。