インド準備銀行のルピー介入が、10年ぶりの規模に膨らんでいる。ドル売りと流動性規制を組み合わせた多層的な防衛策——ここまでは「中央銀行の仕事」だ。問題は、その薬が患者の別の臓器を傷めつけている疑いが出てきたことにある。

RBI 通貨引き締めが直撃する「10年かけて積み上げた外資基盤」

インドはここ数年、グローバル債券指数(JPモルガンGBI-EMなど)への組み込みを実現し、海外機関投資家の資金を着実に引き込んできた。その努力の成果は地味だが確実で、外貨建て運用資産が増えるたびにルピー建て国債市場の厚みも増していった。

ところがRBIが今回の引き締め策で手を突っ込んだのは、まさにその配管部分だった。流動性規制が外貨調達コストを押し上げると、ヘッジコストを含めたインド債券の実質利回りが低下する。機関投資家にとっては「割に合わない市場」へと変わりかねない構図で、資金流入が細るどころか流出に転じる可能性が指摘されている。

「インドが10年で最も大胆なルピー防衛策を実施しているが、その策が長年かけて引き寄せてきた海外投資家を逆に遠ざけるリスクをはらんでいる」——Bloomberg報道より

インド 債券指数 資本規制という組み合わせが生む矛盾は、数字に現れる前に市場心理を先に動かす。実際の資金流出が統計に出る前に、投資家が「次の一手」を警戒して足を止めることのほうが怖い、という指摘もある。

トルコ、アルゼンチンと重なる「防衛が招く逆流」の記憶

新興国通貨防衛が自国の資本市場を痛めつけた事例は珍しくない。トルコは2021年、政策金利を通貨安局面で逆に引き下げるという異例の措置を取り、リラが半値以下に吹き飛んだ。アルゼンチンは幾度もの資本規制でドル建て資産との二重相場を生み、外資の信頼を長期にわたって失った。

インドの今回の措置はそこまで極端ではないにしても、「防衛策が逆効果を生む」という皮肉な逆説の匂いは同じだ。RBIが何を優先するか——ルピーの水準か、それとも外資との信頼関係か——という問いが、じわじわと市場に浮かび上がりつつある。

この先どうなる

最大の焦点は、RBIがこの政策矛盾に気づいて軌道修正を図るかどうかだろう。流動性規制の緩和や介入手法の変更といった「微調整」で外資の懸念をなだめられるか、それとも一度動いた機関投資家の心理を引き戻すには相当の時間がかかるか。インド 債券指数 資本規制をめぐる議論は、次の四半期の資金フロー統計が出るタイミングで一段と具体的な局面を迎える。ルピーを守ろうとした措置が、もっと大切なものを削っていなければいいのだけれど。