ホルムズ海峡封鎖の余波が、コモディティ市場の想定外の場所まで届き始めている。原油ではなく、スーパーの食品棚だ。ブルームバーグが報じた内容を追ってみると、「石油危機」という言葉では全体像が全く追いつかないことがわかった。

LNG・肥料・金属——同じ海峡を通る「見えない輸出品」

世界の石油輸送量の約20%が通過するホルムズ海峡。ここを封鎖すれば原油価格が跳ねる、というのは誰もが知っている話だ。ただ今回調べていて引っかかったのは、液化天然ガス(LNG)、アンモニア(肥料原料)、鉄鋼・アルミの原材料も、まったく同じルートで世界に運ばれているという点だった。

中東湾岸諸国はエネルギーだけを売っているわけじゃない。カタールはLNGの世界有数の輸出国で、サウジアラビアやクウェートは肥料関連の素材を大量に出荷している。これが止まると、農業コストが連動して動き出す。

「イランとの戦争が世界の石油供給を圧迫するなか、その影響は幅広いコモディティに波及しており、グローバルなサプライチェーンを根本から作り替えることが見込まれる」(Bloomberg、2026年4月10日)

グローバルサプライチェーン再編という言葉は以前からよく使われてきたが、今回はリスクの順番が違う。エネルギーではなく「食べ物の値段」が先に動くかもしれない、という話になっている。

肥料が上がると、小麦・大豆・トウモロコシが連鎖する

仕組みはこうだ。アンモニアなどの肥料原料価格が高騰すると、農家のコストが上がる。そのコストは小麦・大豆・トウモロコシの卸値に乗っかり、加工食品や飼料を経由して、最終的にスーパーの棚価格に転嫁される。この連鎖には時間差があるから、今の海峡封鎖の影響が食品価格として表れるのは数か月後という見方もある。

肥料価格高騰が2022年のウクライナ侵攻後に起きたときも、世界の農産物市場は軒並み上昇した。あのときと構図が似ているという指摘は、現地の農業アナリストの間でも出始めているらしい。

さらに鉄鋼・アルミの原材料が滞れば、製造業のコストにも火がつく。輸送コスト、製造コスト、食品コストが同時に動く展開になれば、インフレ圧力は一つの産業に収まらない。

この先どうなる

ブルームバーグは、封鎖が長期化した場合、グローバルなサプライチェーンそのものが恒久的に再編されるリスクを指摘している。代替ルートの整備や調達先の分散が加速するとしたら、その恩恵を受ける港湾や国が出てくる一方、今のサプライラインに依存している国は対応を迫られる。日本もLNGの中東依存度が高く、他人事ではない局面だ。肥料価格高騰の影響が食料安全保障に直結するとなれば、政策側の動きも早まるんじゃないか。次に注目すべきは、各国政府がサプライチェーン再編に向けた具体策を打ち始めるタイミングになりそうだ。