日銀マイナス金利解除が、ついに「秒読み」という言葉で語られる段階に入った。ロイターの報道によると、早ければ今月中にも政策変更が実施される可能性があるという。2007年以来、17年間にわたって日本経済を覆ってきた超低金利の時代が、静かに、しかし確実に終わろうとしている。

17年間「封印」されていた金利が動く日

マイナス0.1%という政策金利は、デフレ脱却という大義名分のもとで長年維持されてきた。日銀が「解除の条件」として繰り返し口にしてきたのが、賃金と物価が同時に上昇するという組み合わせだった。2024年の春闘では大手企業を中心に賃上げ率が33年ぶりの高水準に達し、消費者物価も日銀目標の2%を超えて推移している。条件は、ほぼ揃ったと判断されたらしい。

「事情に詳しい関係者によると、日本銀行は早ければ今月中にもマイナス金利政策を解除する見通しで、17年ぶりの利上げとなる可能性がある」(ロイター、2024年3月)

調べていて引っかかったのは、「解除」という言葉の重さだ。単なる金利の数字変更ではなく、日銀が黒田前総裁の時代から推し進めてきた異次元緩和の出口戦略そのものを意味する。約10年に及ぶ実験が、ここで一つの結論を迎えようとしている。

得する人と、損する人が同時に生まれる

金利が上がれば、まず円安是正への期待が浮上する。ドル円は150円前後で推移しており、輸入コストの高騰に悩む消費者にとっては朗報になりうる。ただし、話はそれだけじゃない。

変動型住宅ローンを抱える家庭には、じわじわとした返済負担増が現実になってくる。国内の住宅ローン利用者の約7割が変動金利型を選んでいるとされており、0.1%でも金利が動けば数十万単位で総返済額が変わるケースも出てくる。

中小企業の資金繰りへの影響も無視できない。長年の超低金利環境に適応した経営体質のまま、突然「普通の金利」を突きつけられる企業が一定数出てくるのは避けられないだろう。

さらに見落とせないのが日銀自身のバランスシートだ。日銀は国債を500兆円規模で保有している。金利上昇は保有国債の価格下落を意味し、日銀の財務に評価損が生じる可能性がある。中央銀行が「自分で自分を傷つける」という、やや皮肉な構図が生まれるわけだ。日本銀行利上げ2024は、政策当局にとっても綱渡りの局面となる。

この先どうなる

マイナス金利解除はあくまで「第一歩」にすぎない、というのが大方の見方だ。今回の動きは0%近辺への正常化であり、欧米のような急激な利上げとは性格が異なる。日銀は慎重な情報発信を続けており、「緩和的な金融環境は当面維持する」というメッセージを繰り返している。

焦点は、その次のステップにある。年内に追加利上げがあるのか、長期金利の誘導目標も見直されるのか。異次元緩和の出口戦略が本格的に動き出したとすれば、日本経済は数十年ぶりに「金利のある世界」を生きる練習を始めることになる。住宅ローンの借り換えを考えている人は、今夜あたり試算し直してみてもいいかもしれない。