米イラン交渉の「成功条件」が、合意ではなく「席を立たないこと」——その一言が、今の交渉の危うさをすべて語っている。ブルームバーグのジェフ・メイソン記者が報じたこの言葉を見て、思わず読み返した。それほど、現状が綱渡りだということらしい。

イスラエルがテーブルをひっくり返しかねない理由

交渉の最大の火種はイスラエルによるレバノン空爆だ。イランにとってレバノンのヒズボラは影響圏の核心。そこに爆撃が続く状況で、テヘランが大幅な譲歩を見せれば国内向けに「敗北」と映る。交渉担当者が何を言っても、頭上で爆弾が落ちていれば政治的に動きようがない——というのが今のイランの立場だろう。
レバノン空爆イスラエルの継続が、交渉のリズム自体を壊している格好だ。

「イスラエルのレバノン攻撃と、ホルムズ海峡を通じた石油流通が、米イラン両国が長期合意に向けて交渉を進める上での主要な障壁となっている。」(Bloomberg / Jeff Mason、2026年4月10日)

もう一つの障壁がホルムズ海峡停戦問題、つまり海峡の「通行保証」をめぐる駆け引きだ。世界の原油輸送の約2割が通るこの海峡が封鎖状態に入れば、エネルギー市場への波及はリーマン後の石油ショックに匹敵するとも言われる。イランにとってホルムズは最後のカードであり、それを手放すことは交渉上の自殺に近い。米国側がどこまで保証を引き出せるか、ここが実質的な合意の核心になっている。

2週間の停戦、崩れたらどうなるか

現在の停戦は発効からまだ2週間。「脆弱」という表現では足りないくらい、薄い氷の上に乗っかっている状態だ。交渉が決裂すれば停戦は即座に意味を失い、イスラエル・イラン間の緊張が再燃する可能性がある。その場合、ホルムズ海峡停戦どころか封鎖リスクが一気に現実味を帯び、原油価格の急騰が世界経済を直撃するシナリオが浮上する。
市場はすでにこのリスクを織り込み始めているが、表立った混乱がないのは「まだ交渉が続いているから」という理由に過ぎない。席を立った瞬間に状況は変わる。

この先どうなる

今週末の協議でどちらかが退席すれば、2週間積み上げた停戦の信頼は一気に吹き飛ぶ。逆に、双方が「合意はなかったが決裂もなかった」という結果を持ち帰れれば、次のラウンドへの扉はかろうじて残る。注目すべきは、イスラエルがレバノンへの攻撃をいつ止めるか——あるいは止めないか——という点だ。米国がイスラエルに自制を求める動きを見せれば交渉は前進し、沈黙のままなら次回も今週末と同じ綱渡りが繰り返されることになる。今後数日の報道から目が離せない。