ホルムズ海峡の通航制限は、停戦後も解除されていない。世界の原油輸送量の約2割が通過するこの18キロメートルの水路で、イランは今も各国に「個別の条件」を突きつけている。戦闘が止まったからといって、支配が終わったわけじゃない——そのことを、この海峡は静かに証明しつつある。
イランが各国に迫る「二択」:原油か、対米関係か
NYタイムズの報道によれば、イランは停戦後も通航への締め付けを維持し、各国に対して米国との対立を招きかねない取引を迫っている。
「停戦後もイランは通航への締め付けを維持し、各国に対して米国との対立を招きかねない取引を迫っている。」(The New York Times, 2026年4月10日)
具体的には、イランが通航を認める見返りとして、米国の対イラン制裁を事実上迂回するような二国間合意を各国に求めているとされる。これを呑めば制裁違反のリスクを負い、断れば原油調達ルートが詰まる。日本・韓国・インドといった主要輸入国が直面しているのは、まさにこの二択らしい。
エネルギー依存度が高い国ほど、この圧力に抗いにくい。日本の場合、中東依存率は原油輸入全体の9割超。ホルムズ経由を大幅に減らすような代替ルートは、現時点では存在しない。韓国・インドも事情は似たようなもので、各国政府が水面下でどう動いているか、表に出ない交渉が続いているとみられる。
「通行料外交」という古くて新しい手法
イランがホルムズ海峡を政治カードとして使う手法は今に始まったことではない。ただ、停戦という「平和の演出」の直後にこれをやっているところが今回の特徴だった。軍事的な緊張が和らいだように見えるタイミングで、経済的・外交的な締め付けを強化する——これは、表向きの停戦と実質的な圧力の並走という、なかなかしたたかな構図じゃないか。
米国側も当然これを黙って見ているわけではなく、制裁網の抜け穴を探している国々への監視を強めているとされる。結果として各国は、イランと米国、双方から同時に圧力を受けるという板挟み状態に置かれている。原油輸送の地政学リスクが、停戦後に新たな形で浮上したと言っていい。
この先どうなる
鍵を握るのは、米国がイラン向け制裁をどこまで厳格に運用するかと、各国が対米関係をどこまで優先するかのバランスだろう。過去にはインドや中国がイラン産原油の「抜け道輸入」を続けた実績もあり、今回も全面的な遵守が徹底されるかは不透明なまま。イランとしては、各国が個別に折れてくる状況を続ければ、停戦後も実質的な影響力を維持できる計算でいる。ホルムズ海峡をめぐる静かな権力ゲームは、しばらく終わりそうにない。