レバノン停戦条件が満たされない限り、交渉のテーブルには着かない——大統領府高官がそう断言した翌日、イスラエルの空爆でレバノン各地に21人の遺体が増えた。同じ家族7人が一度に失われた町、直撃を受けた医療センター、ドローンに狙われた救急車。停戦どころか、戦場の論理は加速しているようにしか見えなかった。
空爆の夜、同じ家族7人が消えた
レバノン当局によると、最新の攻撃ではアッバシーイェの町で7人の家族が全員死亡し、ズラリーイェで11人が犠牲になった。ブルジュ・カラウェイの医療センターは直撃を受けて2人が死亡、トゥールでは救急車がドローンに狙われた——こちらは奇跡的に死者なし、とある。
イスラエル軍はこれについて「北部イスラエルに向けて発射されたロケットランチャー約10基を攻撃した」と説明し、あくまで軍事目標への対応だと主張している。イラン停戦とは無関係だとも強調した。
「レバノンは来週イスラエルとの直接交渉に参加するのは、事前に停戦が成立している場合のみだ」——レバノン大統領府高官、BBCへの声明より
ネタニヤフ首相はレバノン側の「繰り返しの要請」を受けて直接協議を承認したと語り、米国務省も来週ワシントンで会合を開くと発表した。だが爆撃は止まっていない。「協議承認」と「空爆継続」が同時進行しているあたり、この交渉がどういう性格のものか、なんとなく透けて見えてくるんじゃないか。
ヒズボラが飛ばした「最遠のロケット」が示すもの
ヒズボラ側も反撃を続けている。今回の戦闘で初めて、地中海沿岸の都市アシュドッドへロケット弾が発射された。これまでで最も遠い標的で、イスラエル軍によって迎撃されたものの、「射程の拡大」という事実は残った。
イスラエル・レバノン直接協議が実現したとしても、ヒズボラが攻撃の距離を広げながら交渉の余地を探っている構図は変わらない。キリヤット・シュモナやアッパーガリラヤへの砲撃も続いており、北部の住民にとって「停戦」はまだ言葉の上の話にすぎないらしい。
ヒズボラ・アシュドッド攻撃の迎撃成功は、イスラエルにとって防衛能力の証明ではあっても、拡大するエスカレーションを食い止める答えにはなっていない。
この先どうなる
来週のワシントン会合は、今のところ「開かれるかどうかも不明」という状態に近い。レバノン側は停戦を前提条件に掲げ、イスラエル側は爆撃を続けながら協議の意向を示すという、矛盾した構図が続いている。米国が仲介役として圧力をかけるシナリオもあるが、イランとの停戦交渉が並行している中で、レバノン戦線がどのタイミングで優先議題になるかは見通せない。ワシントンの会議室に両者が揃う日が来るとすれば、それは誰かが先に折れたときだろう——それがどちらなのか、まだ誰にもわからない。