Benjamin Flowersの名前が、またアメリカの司法地図を塗り替えるかもしれない。トランプ前大統領がTruth Socialに投稿し、フラワーズ氏を合衆国控訴裁判所判事に指名すると発表した。連邦判事職は今回が初めてで、オハイオ州司法長官補佐官として保守系法曹のキャリアを積んできた人物だ。
控訴裁判所とは何か——「最高裁の一つ手前」の重さ
連邦地裁の判決は控訴裁判所で覆せる。そして控訴裁の判断はそのまま最高裁への入口になる。つまり、ここに「自分の人」を置けるかどうかが、政策の生死を左右する分岐点になりやすい。
トランプ政権1期目(2017〜2021年)では約230人の連邦判事を任命し、最高裁の保守優位も確立した。その結果、2022年のドブス判決でロー対ウェイド判決が覆され、中絶権が連邦レベルで保護されなくなった——という経緯は、記憶に新しいんじゃないだろうか。今回の指名はその延長線上にある。
「ベンジャミン・フラワーズ氏を合衆国控訴裁判所の判事として指名することを喜んで発表します」――Donald J. Trump(Truth Social)
投稿の文面は短い。だが、その短さに込められた意図は軽くない。
中絶・銃・移民——フラワーズ指名が揺さぶる3つの戦線
連邦控訴裁判所の判事が扱う案件は、政策の根幹に触れるものが多い。中絶アクセス制限をめぐる州法の合憲性判断、銃規制の適用範囲、移民の強制送還手続き——これらはいずれも地裁から控訴裁へと上がってきやすい類の訴訟だ。
保守系の判事が増えるほど、これらの判決は保守寄りに傾く確率が統計的に上がる。フラワーズ氏のオハイオでのキャリアを見ると、宗教の自由や規制撤廃に関わる案件で保守的な立場を取ってきたらしい。ただし、連邦レベルでの実績がない以上、具体的な判断傾向は任命後に確認するしかないのが正直なところだ。
ひとつ引っかかったのは、今回の指名が「どの巡回区の控訴裁か」がまだ明示されていない点。第6巡回区(オハイオを含む中西部)であれば、同州出身のフラワーズ氏の配置としては自然だが、それだけに中西部の保守票層へのシグナルにもなりうる。
この先どうなる
指名後は上院司法委員会での公聴会、本会議での承認投票というプロセスが待っている。共和党が上院多数を維持している現状では、承認そのものは大きな障害にはならないとみられる。問題はその後——フラワーズ氏がどの案件でどんな判断を下すか、だ。
トランプの2期目における司法指名は、今回が「最初の一手」に過ぎない可能性がある。今後も複数の空席ポストへの指名が続くとすれば、連邦控訴裁判所の色は数年単位でじわじわと変わっていく。その変化は選挙結果よりも長く、静かに、アメリカ社会に刻み込まれていく。判決文に名前が残る限り。