オルバン選挙の結果を待たずして、ハンガリーの金融市場はすでに「終幕」を値段に織り込み始めた。ハンガリー国債とフォリントが複数年来の高値圏に迫ったのは4月10日のこと。16年間、EU内で最も強権的と批判されてきた指導者の退場を、投資家たちが先に「買い」で表明した格好だ。
フォリントと国債が動いた理由——16年分の「リスクプレミアム」が剥がれる
オルバン・ヴィクトル首相が2010年に政権を握って以降、ハンガリーはEUとの関係を著しく悪化させてきた。司法の独立性を掘り崩す法改正、国営・親政府メディアへの集中、そしてロシアとの距離感をめぐるブリュッセルとの度重なる衝突。結果として、EUはハンガリーへの構造基金の一部を凍結。数十億ユーロ規模の資金がハンガリーに届かないまま積み上がっていた。
投資家が嗅ぎ取ったのはその「解凍」シナリオだ。政権が交代し、新政権がEUの法の支配基準を満たす姿勢を示せば、凍結資金が流入してくる可能性がある。ハンガリー国債フォリントの急伸は、その期待の表れと見るのが自然だろう。
「ハンガリーの選挙前の資産急騰により、同国の債券と通貨は複数年来の高値圏に迫っている。投資家たちは日曜日の投票によって、ヴィクトル・オルバン首相の16年間の支配が終わると見込んでいる。」(Bloomberg、2026年4月10日)
ブルームバーグがこう報じたとき、フォリントはすでに動いていた。市場は「速報」を待たない。
対抗馬ペーテル・マジャル——無名から台頭した「反オルバン」の顔
オルバン陣営に挑んでいるのが、元EU当局者のペーテル・マジャル氏だ。元妻がオルバン政権の腐敗を内部告発したことで注目を集め、わずか1年余りで最大野党「ティサ」を率いるまでになった。世論調査では与野党の支持率が拮抗しており、接戦ゆえに市場が先走った面もある。
ただ、選挙制度はオルバン政権が設計し直したものだ。小選挙区中心の仕組みはフィデス(与党)に有利とされ、得票率が逆転しても議席数が逆転しない可能性が指摘されている。市場の「賭け」が確信に変わるかどうか、日曜の開票まで予断を許さない情勢ではある。
この先どうなる
4月13日の投票結果次第で、シナリオは大きく二つに分かれる。マジャル氏が政権を獲得した場合、新政権がEUとの関係修復に動けば、凍結されたEU資金——推定50億ユーロ超——の段階的解放が視野に入る。ハンガリー国債フォリントのさらなる上昇余地があると見る向きも多い。
一方、オルバン氏が僅差で生き残った場合、いわゆる「選挙プレミアム」の巻き戻しが起きて、資産価格は急反落するリスクも十分ある。EU法の支配をめぐる対立が再燃すれば、凍結はむしろ長期化しかねない。市場が「賭け」に勝つかどうか——答えは数日後に出る。