米イラン交渉の開幕を48時間後に控えた4月10日、ウォール街の空気が変わった。ゴールドマン・サックスのアレックス・ブロスタインがブルームバーグの中継に登場し、「市場はすでに構えに入っている」と明言したのだ。株式だけじゃない——債券も、原油も、同時に神経を尖らせている。

ブロスタインとクラーク退役大将が同時に出た、その重さ

注目したのは、金融アナリストと元軍人が同じ画面に並んだことだった。元NATO最高連合軍司令官のウェズリー・クラーク退役大将が外交・軍事の両面からリスクを読み解き、ブロスタインが市場への波及を語る。この組み合わせ、普段の相場解説番組では見ない。それだけ今回の交渉が「金融イベント」だけで収まらないと、制作側も感じているんだろう。

バークレイズのジョン・ヒルは債券市場の神経質な動きを指摘し、フェデレーテッド・ハーミーズのRJガロは交渉失敗シナリオが金利市場に与えうる衝撃を詳述した。ウォール街 原油リスクの話だけでなく、国債の価格形成にまで影が差し始めているらしい。

「ウォール街は米・イラン協議を前に身構えている」——Bloomberg The Close, 4/10/2026

この一言の重みは、文脈を知ると増す。「身構える(bracing)」は金融メディアが使うとき、単なる警戒じゃなく「ポジション調整が始まっている」というサインでもある。

妥結と決裂、原油価格はどちらに動くか

シナリオは二択に近い。交渉が妥結すれば、イラン産原油の供給増期待から価格は下落方向へ。世界のインフレ圧力がわずかに緩む余地も生まれる。一方、決裂した場合——ホルムズ海峡を巡る緊張が再び臨界点へ向かう可能性がある。世界の原油輸送量の約2割が通過するこの海峡が不安定化すれば、エネルギーコストへの跳ね返りは一時的では済まない。ウォール街 原油リスクとして市場参加者が最も警戒しているのが、まさにこのシナリオだった。

ウェズリー・クラークが強調したのも、この非線形なリスクだったとみられる。外交の失敗が軍事的緊張に直結するシナリオは、確率は低くても、市場への影響は巨大になりうる。低確率・高インパクト——保険として原油オプションを積む動きが出るのも、自然な流れか。

この先どうなる

米イラン交渉の結果次第で、今後数週間の相場の風景は大きく変わりうる。妥結なら原油安・債券安定・リスク資産の小反発、決裂なら原油急騰・安全資産への資金逃避というのが市場のメインシナリオ。ただし、交渉はたいてい「完全な妥結」でも「完全な決裂」でもない中間地点で終わる。その場合、不透明感だけが長期化するという、最もやっかいな展開もある。ウォール街が「構えに入った」まま長期間過ごすのは、それ自体が市場の重荷になりかねない。次の焦点は交渉の初日に何が語られるか——そこに全員の視線が集まっている。