制裁石油迂回の規模が、推計で日量数百万バレルに達していたらしい。イランとベネズエラ、制裁下に置かれたはずの2カ国の原油が、中国を中継地点として世界市場に流れ込み続けてきた——調べれば調べるほど、ワシントンの制裁網がいかに「紙の上の話」になっていたかが見えてくる。

中国が買い続けた「割引原油」の正体

イランとベネズエラはともに、欧米の金融システムへのアクセスを断たれた状態にある。本来なら輸出も買い手探しも難しいはずだった。ところが中国の独立系精製業者、いわゆる「ティーポット精製所」が割安価格で引き取り、正規品と混ぜ合わせて転売するルートが定着した。制裁対象国にとっては外貨収入源、中国にとっては格安エネルギーの調達手段——お互いにうまみがある取引だったわけだ。

イラン原油輸出の実態について、独立系の貨物追跡データを見ると、制裁強化期にも船舶のAIS(自動識別装置)信号をオフにしながら中国港湾へ入港するタンカーが途絶えなかったことがわかっている。ベネズエラ産もSPCCやPDVSAのフロント企業を経由して同様のルートに乗っていたとされる。

トランプ、イラン・ベネズエラへの介入を経て、中国が構築してきた制裁石油輸入スキームを崩壊させる

この一文が示す通り、トランプ政権が狙うのはテヘランとカラカスの外貨を干上がらせること。そのための手段が、迂回ルートを支えてきた中国側の受け皿を潰すことだ。二次制裁——つまり制裁対象国と取引した第三国企業への制裁——の発動をちらつかせることで、中国の精製業者や仲介企業に取引をやめさせようとしている。

「最大圧力」が中国のエネルギーコストを直撃する可能性

ここが引っかかったポイントで、もしこの迂回ルートが本当に断たれたとしたら、影響は中東・中南米だけに収まらない。中国の独立系精製所は割安な制裁油に依存する形でコスト競争力を維持してきた。代替調達先はサウジアラビアやUAE産になるが、当然価格は跳ね上がる。その差額が中国国内のガソリン・ディーゼル価格、ひいてはアジア全体の石油製品市場に波及するシナリオは十分にあり得る。

ベネズエラ制裁の再強化については、すでに石油収入を担保にした中国への債務返済スキームが崩れるリスクも指摘されている。カラカスが首が回らなくなれば、中国の対ベネズエラ融資が不良債権化する可能性もある。トランプ政権にとっては、中国に経済的な痛みを与えながらイランとベネズエラを締め上げる「一石三鳥」の絵図らしい。

この先どうなる

カギを握るのは、中国がどこまで二次制裁を恐れるかだろう。過去の例を見ると、制裁圧力に対して中国は旗艦企業を守りつつ、より小規模な仲介業者に役割を移す「シャドーフリート」的な適応を繰り返してきた。トランプ政権が個々の船舶・企業を追跡して制裁リストを更新し続けられるかどうか、執行能力の持続性が問われる局面になりそうだ。イラン核協議の行方や米中貿易交渉との絡みも出てくるだろうから、「制裁石油迂回の封じ込め」が単独の政策として完結するかは、正直まだわからない。