GUGI潜水艦2隻が、英国民の知らないところで海底ケーブルの真上を動き回っていた——英国防相ジョン・ヒーリーが木曜日の記者会見でそう明かしたとき、会場は一瞬静まり返ったらしい。ロシア海軍のアクラ級攻撃型潜水艦が囮として英国海域に侵入し、英軍の注意を引きつけている間に、GUGIの高度偵察潜水艦2隻が別ルートで海底インフラに接近していた。教科書通りの欺瞞作戦、しかも本番さながらの規模で。
アクラ級が「見せ球」だった——2隻の偵察艦はその陰で何を調べていたか
英国の海岸線には現在、約60本の海底ケーブルが接続されている。イースト・アングリアやイングランド南西部が主な上陸地点で、英国内のインターネット通信のじつに90%超がこのルートを経由している。金融取引、医療記録の転送、エネルギーグリッドの制御信号——ありとあらゆるものが、水深数千メートルの海底を這うケーブルの上に乗っている。
GUGI(ロシア海軍総局深海研究部門)は、通常の攻撃型潜水艦とは別枠の特殊部隊的な組織として知られている。水中ドローンの操作や海底インフラの詳細マッピングを専門とし、その活動が表に出ること自体がまれだった。今回ヒーリーが公表したのは、そういう組織が「実際に動いていた」という事実だ。
「われわれはあなたを見ている。ケーブルとパイプラインの上での活動は把握している。いかなる損壊行為も、深刻な結果を招く」——英国防相ジョン・ヒーリー(ダウニング街記者会見)
一方、ロシア大使館はタス通信を通じて関与を否定。「英国の重要インフラを脅かしておらず、攻撃的な言辞も使っていない」とのコメントを出した。アクラ級はその後、英海軍艦艇と航空機に監視されながら英国海域を離れてロシアへ戻ったという。GUGI所属の2隻は——それより長く、残っていた。
海底ケーブル破壊工作は「最も検知しにくい攻撃」になりつつある
ここが引っかかった点だ。2022年のノルドストリーム爆破以降、海底インフラへの攻撃はハイブリッド戦争の定番メニューに加わった感がある。しかし今回のケースは爆発物や直接破壊ではなく、あくまで「偵察」の段階だったとされている。それでもヒーリーが公の場で公表したのは、威圧効果を狙ったロシア側への警告であり、同時に国内世論への説明責任でもあったはずだ。
海底ケーブル破壊工作が本当に実行されれば、物理的な復旧には数週間から数ヶ月かかる。その間、金融システムの一部は停止し、通信網の遅延が広範囲に及ぶ。軍事的な衝突を起こさずに社会インフラを揺さぶるという発想は、まさにハイブリッド戦争の核心部分といっていい。
この先どうなる
NATO加盟国の間では、海底インフラの共同監視体制を強化する議論がすでに進んでいる。英国は昨年から北大西洋の海底監視プログラムへの投資を増やしており、今回の公表はその必要性をあらためて裏づける形になった。ロシア側が偵察を続けるなら、英国やNATOの対応も段階的に引き上げられていくだろう。「われわれはあなたを見ている」という言葉は、単なる牽制ではなく、次の一手をめぐる駆け引きの始まりとも読める。海の底で、見えない緊張が続いている。